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2007年3月21日 (水)

受胎告知

受胎告知の図像学の日本語文献としてはボッティチェリ研究で有名な矢代幸雄氏の

「受胎告知」(新潮社)があり、英語ではシラーの英訳、

「キリスト教美術の図像学」 1巻、33-54ページ、 図66-129があります。

 今、レオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」展が開催されており、

シラーの図120はこの絵なのですが本文には言及がありません。

ちなみにその前後の文では「寝室、寝台の意味」「天使が持ってきた、

勅書(手紙より公式的という含意)に三重や一重の印章がついている作例」

「花や植物の意味」を解説しています。

 シラーでは続いて、中世の受胎告知の最後を飾る作例として、

ドイツの二つ、

 グリューネヴァルトの「イーゼンハイム祭壇画」内の図像と、

 浮彫彫刻;ファイト・シュトースのニュルンベルクのザンクト・

ローレンツ教会にある、を挙げています。

 ドイツ圏の彫刻についてはチャペル・ニュースの第16回で

採りあげ、14回目の「イタリア・盛期ルネサンス」でラファエロらの絵画、

15回目の「無原罪の御宿り像」ではスペインのムリリョらと並べ、

当時を代表する三つの主流とみなしました。

 色で三区分するとどうなるか考察中です。

シラーは最後にティントレットやイグナス・ギュンター、レンブラントの

作例を挙げています。

2007年3月17日 (土)

守護するマリア、その3:「守護のマント、やロザリオ以外、」のマリア像

 図像学的分類のうち、疑問が残る「守護する」マリア像の第三区分について

述べていきます。

 まず「メルセデ修道会」のマリア、という名の図像と、

 「トリニタリア(トリニダード、三位一体の意味)修道会」のマリア、

 「援助(Soccoro)」のマリア(「ミゼリコルディア(守護のマント)」のマリア、の

一変種)、だが「棒」を持って悪魔(足元に描かれることが多い)を攻撃する

マリアを描き、好戦的な印象、また創世記に登場する「蛇」を踏みつける

「黙示録の女」としてのマリア、とも類似する。何となれば蛇も悪魔も

ときに同じような怪物状に描かれ、蛇を攻撃するマリアも武器を持つことが

多いから。

 そして「守護のマリア」の一部として「女羊飼いマリア」の図像がある。

羊を守護する「女羊飼い」としてのマリアを描く。

 そして「光、ろうそく」のマリア、という「守護」の一変種もあり、頭部の

「光背」を強調したり、両手から光線のようなものを発している図像がある。

 さらに、「デザンパラドス(見捨てられた者)のマリア」(スペイン特有)や

「勝利のマリア(勝利を象徴する「棕櫚」を持ち(棒に似ているが)、悪魔を

踏みつける、やはり好戦的な図像、

「摂理のマリア」「善き休息のマリア」という、眠るイエスを抱くマリア像がある。

 以上が様々な図像を含む、「守護のマリア」の第三(その他)グループである。

 

 これらが「守護するマリア」の第三(その他)のグループである。

マグダラのマリアの図像学

 マリア(イエスの母)に近しい人(男性)として3人を挙げましたが、女性から

3人挙げるとしたら、いろいろ解答はあると思いますが、

母アンナ、(キリスト教神学的に対比されるという意味で)エバ(人類の祖とされる)、

そして「マグダラの」マリア、というのも一候補でしょう。

 ただし、「マグダラの」マリアは、マリア(イエスの母)と混同されることに

おいて、一番「近しい(似ている)」と言えるかもしれません。

 イエスの十字架刑の群像で、十字架の下で悲しむ人々の中に二人が

含まれることがあり、たいてい何らかの手がかりから二人は区別され

ますが、展覧会カタログなどで「間違った方の」マリアに同定されること

もあるようです(先述した「1300-1800年のマリア像」(1987年、ドイツの

ケヴェラーで開催)に一例)。またもっと深い意味で、たとえば有名な

ミケランジェロの「ピエタ」(ヴァティカン)の「女性」は若く、美しすぎるから

「マグダラの」マリア(を描こうとしたの)ではないか、とする弓削 氏の

発表など、既定観念を揺さぶるような類似もあります。

 複数の人物からなる彫刻などで、その一体しか残らなかった場合など、

本当は確信をもって区別できないのかもしれません。

 今回は「赤」の切手を冒頭に掲げるべきだったかもしれませんが、

両マリアの「混同」の可能性を述べているのであえて「色」は特定しませんでした。

2007年3月15日 (木)

イタリアとドイツのマリア:フランスを介して

Photo_6  毎回の記事に赤青緑のいずれかのマリア像を表示して記事への

導入にしたいと思います。

 このマリア像(ラファエロ)は作者はイタリア、現在の所在地はドイツ、

(ドレスデン、もしドイツ年かイタリア年で来日すれば私にとっては

ミロのヴィーナス、モナリザを超える至宝と思えます)、

そしてロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」で

グラティアという女性(アヴェ・マリア、グラティア・プレナ、、、とも連なる)

においてドイツ的、フランス的、イタリア的三者が理想的融合を遂げた

ように、フランス的要素を見つければ三題噺が完成します。

ラファエロの生涯のなかでフランソア1世に仕えた時期があり、

その名がついた聖母子像は確か青いマントが印象的な作品でした。

フランスが青、イタリア、ドイツに残りのどちらかの色を、となると

情熱のイタリアに赤、冷静なドイツに緑でしょうか。もっとも

イタリアもサッカーは青で競争したらどっちが獲得するか

微妙なところです。ドイツはシュバルト(森)深いイメージが

ありますから緑への連想は堅いところでサッカーチームも

緑のユニフォームのことがありました。

 サッカーへの言及に唐突の感をお持ちかもしれませんが、

国民性の研究でキリスト教分派との対応づけを聞いた記憶が

あります。次回は赤か、青、どちらかではじめたいと思います。

2007年3月14日 (水)

ヨハネの図像学

マリアと縁の深いヨハネは二人いて、その祝日が同一など少なからぬ因縁が

ありますが、同じようによく似たふたつでマリアに密接する植物に杉:

レバノン杉と糸杉があります。

 図像における区別や混同など興味深い点も多く、さらに別のマリア象徴:

園や泉、井戸などを配すると(実在しないが、図像学を説明する上では

好都合な)「独特なマリアの園」ができそうです。これはアンドレ・マルローの

「空想美術館」に倣えば「空想図像学」ともいえそうです。

 話が脱線しそうですが、ダヴィンチの謎めいた「ヨハネ」などの例も

ある通り、マリアとヨハネの「顔」の類似などを追及すれば

「キリストの愛した母(弟子)」の共通項もみえるでしょう。

 マリアの象徴やアトリビュートが一同に会した図像は中世に多くみられ、

その過多のうち、足元の月や雲のみが残ったのが有名なムリリョらの

「無原罪の御宿り像」です。21世紀の新たなマリア像を模索するとしたら、

こうした新たな純化にヒントがあるかもしれません。

 以上はとりとめのないおしゃべりでしたが、~~の図像学、として

マリアを巡る人、ものの紹介は続けたいと思います。

イエスの図像学

マリアを巡る人物の図像学としては、イエス・キリスト、両ヨハネ(洗礼者ヨハネはその

幼児期にマリアと共にあり、福音書記者ヨハネはマリアの晩年にマリアと共にあった)

が三大図像学といえるでしょう。

 女性像としてはよく比較されるのはマグダラのマリア、エバ(アダムとエバのエバ)ら

でしょうが、ここではあえて擬人像である「カリタス(愛、三神徳のひとつ)」

その授乳する姿は授乳のマリアを彷彿とさせる、を挙げます。

 まず、イエス・キリストについてですが、チャペル・ニュースの

61回に及ぶ「イエス像の変遷」があります(1974年12月から

1981年2月)。そのすべてがマリアに関するわけ

ではありませんが、たとえば(13)では東方キリスト教界のイコンとして

聖母子像を2つ図示しています。

 ヨハネについて、福音書記者ヨハネについては三浦アンナ著

「藝術におけるヨハネ」(岩波書店)がありますが、

洗礼者ヨハネについては日本語でまとまった文献はないようです。

マリアと幼児イエスを論じる際に登場するだけでなく、成人としても

群像があり順次採りあげたいと思います。何となればその祝日が

8月29日と個人的に関係ある日でもありますので。

2007年3月11日 (日)

マリア検索図鑑 あ の部 の課題

1990年までの執筆済み分に未見、または記述が不足と考える、

「マリア検索図鑑」の項目を50音順にリスト、コメントしていきます。

 「アプシス」ではビザンティンの記述はありますが、そのイタリアへの

伝播の過程として、イタリア、シシリアの二作例、

チェファルのドームの作例(1148年頃)、

モンレアーレの作例(12世紀後半)をリストします( ML1、208 )

「アルブレヒト祭壇画」はその一例のみを、服飾、ファッションとの関連で

述べましたが、

「中世のマリア論の集大成」という意味で図版、記述が多く必要です

(~~の女王、という様々な図像タイプで、マリア像を囲む聖人群の

階層の分類に役立つ)  ML1、90や Aurenhammer 展覧会カタログ、など

 他文化の受容、継承を論じる概念としてAkkomodation ML1、69は

ギリシア神話の女神の神殿がマリアの教会に変えられたり、

樹、石、水源(泉など)という三大要素のいずれかがある地母神の聖地が

マリア巡礼地に変えられたり、ラテンアメリカでインディオの地母神信仰が

マリア信仰に置換されたり、といった例があります。

 ( あ の項目 続く )

2007年3月10日 (土)

マリアの展覧会:ロシア皇帝の至宝展

この3月から開催予定の標記展覧会について、展覧会史からと、マリアの図像学から

コメントいたします。

 イコンというジャンルの浸透について、1967年は以下のような状況でした

  (「図像学よりみたイコノクラスムの神学論争」 「歴史教育」 19-24p)

「1964年4月、東京国立博物館にて「ロシア秘宝展」が開かれ、ロシアの

イコン19点が展示された。残念ながら余り注目するところとならなかった

が、今年(1967)3月、同館にて「ユーゴスラビア・イコン展」が開かれた

ときは(40点)、多くの人の注目するところとなり、イコンの名称もやや

一般化したようである」

  この前後日本で展示されたイコンのマリア像は「東海大学紀要:マリアの図像学(2)、

日本の展覧会(1954-1987)で展示されたマリア像」にあるごとくですが、現状と比べ、隔世の感があります。

 マリアの展覧会でイコンを含むものとしては下記の2000年から2001年にアテネの

ベナキ美術館で開催の「神の母(マリア):ビザンティン美術におけるマリアの造形表現」

があります(カタログ、532ページ)。記事では特に「神の母(マリア)の奇蹟をもたらす

イコン」(47-57ページ)が」注目です。マリアのイコンの集大成本が進行中との記述が

あり、1500以上の記事(これだけの数の、「奇蹟的とのいわれを持つ」マリア像が、東方キリスト教世界、ここではビザンティン帝国の歴史上の領土内、ロシアや東欧の正教会の国々、バルカンとコーカサス地方、キリスト教東方の国々(コプトのエジプトやエチオピアを指すと思われる)にあるということです。

2007年3月 8日 (木)

原色美女図鑑

いわずと知れた、週刊文春のグラビア連載で、総集編の回をスクラップしている

人も多いと思います。マリアを「美女」と称するのが適当かわかりませんが、

少なくとも「現実の」女性美に対して、過去2000年の「女性美」の一翼を担う

ことは確かです。その際も慎み深いその「美」は原色というより

セピア、モノクロの世界がふさわしいかもしれません。実際、マリア彫像の

白黒写真を見て実物はさらに美しいと思っていると、カラー図版に出会った

時、そのどぎつさ、色の落ち、剥げ(絵画と違い、原型の保存はほぼ不可能

でしょう)に落胆することが多々あります。

 図像学的観察にはむしろ白黒、スケッチ(線描)が適していることも

あるようです。なおマリアについて、その顔、ディティールを集めた

「原色美女図鑑」に近いカラーページがウンベルト・エーコ

の訳書「美の歴史」に載っており、同種の自分なりの選択をしたい

という欲求を起こさせてくれます。

この図鑑がすごい

ジャンルの紹介本で「このミステリがすごい」に始まり、SF,

文庫、新書、辞書・図鑑、とあるのに

「この図鑑がすごい」という、図鑑ジャンルの紹介本は見かけません。

図鑑ジャンルそのものが好きという人はいるはずですし、

日本の既刊本を追うだけでなく、海外の大作(とんでもない大物が

多々あります)を紹介してもし翻訳にでも結びつけば有益なサイト、

ブログになると考えます。

 それで「マリアの図像学」の一部を借りて

  (「図鑑」もIconographiaです)

マリア関連の図鑑(あるいはその類似ジャンル)を

紹介していく予定です。

マリア像100選:二つの試み

二つの試みはともに4枚の図版で1ページ(1回)を構成するという形です。

このブログでは三区分を提唱していますのでその提示もあわせ試行します。

( トレンス を改変) 左がチャペルニュース連載、東海大学紀要、キリスト教史学会紀要の論文、右がドイツのマリア・ハンドブック、 Handbuch der Marienkunde,

1984. Verlag Friedlich Putset. Regensburg. (以下 HMKと略)

の二つの図版部分です。

                           HMK 874-883

   東海大学紀要(3)              「マリア崇敬像の形態学 

   119-117 ページ 形態の分類は       ( Typologie  )」の章への図版です

   右の章によります                  この語は「予型論」の意味も

  西欧のマリア崇敬像の源泉は          ありますがここでは図像学に

  ビザンティンのマリア像である           近い意味で用いています  

  ( チャペル (1)から(6) 

 { 下記のほか祈るマリア(オランス)もあり }

  ホディギトリア型(御子を左に抱く図像、右に抱く

  のもその変形) と

  エレウーサ型(より親密、御子と頬を寄せ合う)

  そして「王座のマリア」という正面向きの図像

  タイプである

  (あまり長いと引用を超えますので、、 以下 次回)

2007年3月 7日 (水)

マリア像100選の試み

マリア像から100選(10でも20でも同じですが)、という試みは

図像学的には傑作主義でなく、代表的な図像タイプをまんべんなく

網羅する、という方法があります。

 ドイツのHandbuch der Marienkundeという「マリア・ハンドブック」は

美術と崇敬像の2章で64枚と36枚、計100枚の図版を示しており、

はからずも100選となっています。

 チャペルニュース連載の「マリア像の分類、変遷」では

時代順の記述が約25回で一巡し、一回約4枚、ほぼ100枚の

図版を示しています。

 世界中のマリア像を検索する図鑑、という試みの叩き台として

これらの100選(他にも~選を用意します)を紹介していきたいと

思います。

マリアの図像学:信仰、希望、愛と受胎告知、降誕

信仰、希望、愛はキリスト教において神に向き合う際の、三つの徳とされています。

これをマリア図像学での三区分に適用してみます。

(典拠はありませんが、現代にマッチしていると考えます)

 既述の通り、「希望(懐妊)のマリア」という図像があり、

時間的にこの図像の以前、以後を画す出来事は

受胎告知(以後、胎内に御子を宿したことが明らかとなる)と

降誕(御子が誕生し、懐妊の状態は終わる)となります。

生涯の図像、説話的図像においてはマリアがどういう

背景の中に置かれているかは自明なことが多いのですが、

単独像になると、どの時期のマリアを描いたかが判断しにくい

こともあります。

マリアの顔:図像学における名前との関係

顔と名前が一致しない、というのは日常よく経験するところですが、

図像学において「顔」はどのように位置づけられているのでしょうか。

東方教会における聖画像である「イコン」の描き方を規定する

「アトスの画法書」や、カトリックにおいて「無原罪の御宿り」をどのように

描くかを示す、スペインのパチェコによる規定などはありますが、

顔のディティールは各画家の相違工夫によるところが大です。

また名前との関係ですが、斯く斯くしかじかの特徴のある顔の

マリア像はこう呼ばれる、といった確実な対応は未見です。

黒い、といった形容や、涙を流す、といった具体的状態のマリア像でも

「黒い」「涙の」と呼ばれるとは限りません。

 ただ現在技術の進歩や「顔」をめぐる学際的アプローチなどにより、

仏像などと同じように「マリアの顔」についても新知見が可能でしょう。

「情愛の聖母子像」についての大学紀要では表情、顔の各器官については

述べましたがまだ全体への接近はできていません。

 日本において「顔学会」という新しい研究分野も生まれ、マリアの

検索図鑑の試作でも顔、をどう扱うか、は大きなテーマです。

 お札、切手に肖像が多用されるのも印象に残りやすく、少しの違いでも

違和感が生じるから偽造防止に役立つ、とききます。

 マリア像、といった時もその「顔」を想起していることは多々あるでしょう。

2007年3月 6日 (火)

マリアの名前

マリアの名前:  東海大学文学部紀要 掲載 「マリアの図像学」(3)より要約、

  適宜、三区分を適用し、検索図鑑とする方法論の試案とした。

語源、語義、 説は60以上あるが、「海」に関する語義がいくつかあることに注目したい

  ( 苦い海、海の滴、海の星、海の没薬) 

    これは陸、海、空 の三区分 の一部とできよう  

     ( 「ポルトガルのマリア」という1000ページを超える大著では  

         これに「天」を加え、四域におけるマリア、という章を設けている)

 名称の分類:  

   Lexikon  der Marienkunde  という、 Marienlexikon の先駆となるマリア百科が

あり、( A - Elithabeth の1巻で 中断) その Ehrentitel (尊称)にもとづき、

他の名称を加えた。

 「無原罪の御宿り」   ルルドのマリア像で有名

 「無原罪の(聖なる)(マリアの)御心」

 マリアの徳を称える名称:  たとえば  「謙譲」  (美術史上の命名?)

 奇蹟の: 

 上智の座:

 敵に対する力、闘争などを示す名称

  平和主義者であるが ときに戦いに荷担することもあるという側面を示す。

  城壁、山、壁、城 など  おや と思うような名称もここに分類されている

 (検討の余地?)

 勝利の:  有名なのは  レパントの海戦でのトルコへの勝利

     ビザンティンの図像像タイプ:「ニコポイア」は「勝利をもたらす者」の意味 

 ( 続く )

  

トリュモー(扉口の中央基柱)の聖母子像

チャペル・ニュース連載(7)への索引を続けます。

 トリュモーの聖母子像 :

  壁面(「尊厳の(王座の)聖母子像」が多い)から解放された三次元の彫像で

マリアと御子もより自由な姿で描かれていく。

  最近の文献ではMarienlexikon 3, 536-537p に

 同項目がある(ただし、「大聖堂彫刻」の一項目として)

  作例はパリのノートルダム大聖堂から二つ、

   アミアンの大聖堂から二つ挙げ、

  ドイツからもフライブルグ・イン・ブレイスガウの作例を挙げ

  ストラスブールの(図像タイプは尊厳の「ソロモンの王座」だが)

  作例にも劣らない、精妙な彫刻と述べた。

   スペインでも13世紀末、レオン大聖堂の通称

  「白いマリア」像もこのタイプ。実はこの作例、

  「御子がマリアの顎を撫でる」の代表としても

   学会紀要で図示し、「白いマリア」という色に因んだ

  名称の説明にも使える、1つ3役も果たす優れものである。

マリア検索図鑑:検索表試案

図像学的索引ともなる、マリア検索図鑑の検索表の試案です。

作例について以下の事項を必要に応じて記述する:

 図像名、製作時期、製作地(所在地)、製作者、製作材質・媒体(小芸術から建築構造まで) 、製作理由(戦勝記念、教会への奉納など)、製作過程(エピソードあれば)、図像学的ディティールの説明 (主要テーマとは必ずしも峻別はできない)

  主要図像名、と 図像学的ディティール の間 に美術史的事項:5W1Hを記述し、 各々を三区分の繰り返しで分類していくことになる。

ストラスブールを地理的に分類すると、パリ、プラハの中間という分類軸が考えられる

(地球街角ガイド8、フランス、 同朋舎出版)

 マリア像からみれば、パリ(と近郊アミアン)は「美しの神」(キリスト像)」

「黄金の聖母子像」(情愛を主とする聖母子像の代表作例)を有し、

プラハは独特な「ボヘミアの聖母子像」圏である、「美しのマリア像」圏でもある。

女性美の典型としてのマリアという考察をこの地理的関係をヒントに可能であろう。

 またストラスブールはドイツ領とフランス領を行き来した地域にあり、

ドイツ、フランス、その中間という座標軸からは

ケルン大聖堂やアミアン大聖堂などとの模範、様式伝播関係が考えられる。

ソロモンの王座:図像学的ディティール

ストラスブールの作例にある、「ソロモンの王座」像の図像学的ディティールを

検索のために分類します。

 ソロモン:旧約でキリストを予型する人物、王

 ライオン:12頭いるのはソロモンとの関連ではユダの12部族を象徴、

  キリストとの関連では12使徒を象徴、

この作例では聖母子像としての「ソロモンの王座」だけでなく、

本家ソロモン自身も下部で王座に座っているのが刻まれている。

建築構造ならではの、広い意味での「群像」といえよう。

 他の作例では12頭のライオンを区別したり

(両ヨハネの象徴となり、実際は13頭いたりする)、

聖霊の7つの賜物の象徴として鳩が描かれたりする。

 このように主題と、周囲の図像学的ディティールを抽出し、

三区分することで、マリアを描く作例から、

マリア検索図鑑を構築することが可能と考える。

マリア検索図鑑:ストラスブール他

マリア検索図鑑:ストラスブール他

  チャペルニュース連載(7)を材料にした、検索図鑑の試みです。

作例:「ソロモンの王座」、1280年頃、ストラスブール大聖堂、西正面 天蓋部

検索(三区分による)

 主題の図像学的分類(トレンス改変): 

  祈る/王座/ディティール/ のうちの  王座、

   王座の三区分(尊厳/謙譲授乳/開く黒い) の第一グループ、

 尊厳(マエスタ像)の三区分(随伴者たち/その特殊例として「ソロモンの王座」/ 

   その他)の第二グループ、で分類は三段階で完了、

 なおその他には三重冠を被るマリア、や聖職者としてのマリア、がある。

 尊厳(王座に座す)というより、聖←→俗、尊厳←→謙譲、との対応かも

しれない。次回は「ソロモンの王座」の図像学的ディティール

(作例によって異なる)を分類、検索する。

2007年3月 5日 (月)

マリアの図鑑:チャペルニュース(7)索引での試み

マリア検索図鑑を赤青緑の三区分で試作する素材に

立教学院チャペルニュースに掲載された「マリア像の分類(7)」を選びました。

この回では西欧初期中世からゴシック初期までの西欧のマリア像を駆け足で

紹介しています。

 索引ですから、本文で殆ど記載していない作例も検索対象です。

図像名  検索キー  ( 図像学的、 その他 歴史的 5W1H いつどこで、、、、

アイルランド、「ケルズの書の聖母子像」 、 800年頃、

  孤高の地位を占めるかのような独特な図像で西欧の伝統に連なるとは

 解しにくい。

   図像: 王座に座す、 まわりに賛美する四人の天使、

    トレンスの区分では 王座に座すマリア: まわりに天使、に分類される。

    いつ、 800年頃はちょうど端境期、

    どこ、 アイルランドは西欧の西端あたり、

 丸彫像:

   「エッセンの聖母子像」  10世紀、 ドイツ

   「イマードの聖母子像」  11世紀  ドイツ

   大型のマリア彫像としては最古のものと考えられる

 (有名なフランス、 クレルモン・フェランの彫像はスケッチが残るのみ

    図像;王座に座すマリア、御子イエスは正面向きでなくプロフィール

フランスの教会建築: 「マリアの扉口」のアプシス、 「王座に座すマリア像」の最古が

  1150年頃、シャルトル大聖堂、西正面右側のタンパン(半円形の小壁部)

   両側の二天使は香炉を持ち聖母子に敬意を表している

  次回は ストラスブールにある「ソロモンの王座」という図像タイプを代表する、

素晴らしく精妙な作例を検索対象にしたい。

   

マリアの図鑑

何をもって図鑑とするか、ここではVIPという三区分から考えてみたい。

 図書分類では図鑑は辞書・事典、と 絵本、画集 の 間の存在であり、

  (図書分類コードの 5 6 7)

 また それぞれの英文字が

    vocaburary    (辞書というより 語彙、ボキャブラリー)  文字の総体

        icon(ogaraphy)   アイコン、イコン (絵文字) も 文字 と 絵 の中間

        picture book      絵の本  であることや

    図鑑のキャッチフレーズ、副題として多いのが

     visual

          illustrated

          picture(sque)

         などからも、VIP  というのは 図鑑を体現するキーワードとみなしたい。

 さて、ここで試作する  マリアの図鑑は何よりも 図像学の方法論で構築したく、

その有効性の検証は、

 知りたい、見たい図像が簡単に「検索」できるか、である。

  トレンスの分類などを長々と紹介してきたのはその区分方法を解説するため

であり、以下 実際の図像(ある連載に登場する作例)を抽出しながら

どう検索の「キー」を付すかを試したい。

 その際、三区分を印象づけるため、赤青緑というイメージを用い、

「赤青緑の三区分による」「マリア検索図鑑」を提示していきたい。

 

図像学的ディティール:細部観察の醍醐味

図像学的ディティール、

 トレンスの最後の分類は

 アットリビュート(持物)、

 御子の仕草  (マリアの仕草も間接的に含む)

 その他、からなる。

 アットリビュートの概説は「新カトリック大事典」の

「アットリビュートとその聖人」 「聖人とそのアットリビュート」のように

二つの方向から可能である。

 トレンスでは 動物(鳩など) 植物( ユリなど)

 その他(本、インク壷、星、生命の泉、柱 など)に三大別、

 御子の仕草では

  御子の手がマリアの王冠(頭)に触れる、

  御子の手がマリアの顎に触れる(撫でる)、

  御子の手がマリアの胸に触れる、

  御子がマリアの右腕に載っている、などが示されている。

その他は、衣装:

       髪飾り、髪型、履物 (頭から爪先まで?):

       人工の装い(もとからの着衣に対して、

         後から、たとえば祝日や屋外での行進などのために被せる衣装):

       材質  (図像学というより美術史)

       図像のある位置、配置 (建築内部、屋外のどこに置かれたか)

        (これも図像学というより美術史)

       最後の全体の総括として「マリアの勝利の寓意」像を紹介。

    以上、悲しみ、は三区分していないが、トレンスの分類の大略である。

次回、これらに基づいて「マリア検索図鑑」を試作する。

能動的に祈るマリア像:三区分

守護するマリア像と、とりなすマリア像に二大別、

守護する方が大きなグループなので、

 ミゼリコルディア(守護のマント)のマリア像と

(その変種という扱いの)ロザリオのマリア像に大別、

 その他の図像はどちらか近い方に分類する(検討中)。

とりなすマリア像は下記に三区分されている。

「最後の審判、個々人の審判にて」 「煉獄にて」 「災厄に際して」

 ここでロザリオのマリア像が三つの玄義(喜び、悲しみ、栄光)を

示すから、生涯からの図像はここに分類するのも一法である。

マリアの展覧会

マリアの展覧会:

 「マリアの図像学(2)」(東海大学文学部紀要)では

日本の展覧会(1954~1987年)で展示されたマリア像を抽出、

図像学的分類を試みています。

 これは(1)で提示した図像学的枠組みの検証にあたる作業で、

展覧会の記録というのは二次的な意義だったかもしれません。

とはいえ、海外のように「マリア」だけで一つの展覧会を構成する

ことは殆どない日本では、こうした抽出も無意味ではないと考え、

1987~2007年の20年の空白はありますが、作業を再開したいと

考えます。もちろん情報はネットにも溢れていますし、完全を期す

こともできませんが、図像学的分類の検証に役立てばと思っています。

 3月の主な、マリア像を含む展覧会は下記の通りです。

 :レオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」展

 :クレムリンの秘宝展; 江戸東京博物館

   ロシアのイコンで「哀れみ、慈悲のマリア」、マリアが御子イエスに頬寄せる図像、

 が主要展示の一つです(ぴあ、にて図示)。この図像タイプについては

 立教チャペル・ニュースの連載、「マリア像の分類(5) 情愛のマリア

 その三つの型」および「マリア像の分類(8) ロシアのマリア像」で紹介しています。 

 また、3月はマリアに関してはその「受胎告知」の祝日がメインですので

今月のマリア、といったタイトルも作成していきたいと考えています。

 

マリアの図像学(3):名称、形態の分類

マリアの図像学(3):名称、形態の分類

 東海大学紀要、(3)より紹介、引用します。

世界各地で崇敬されるマリア像、聖母子像につけられた様々な名称は図像の成立事情や崇敬史を伝えるものとなっている。こうした名称を列挙、整理しておくことは図像タイプの理解にも有益である(必ずしも図像タイプとの対応は明確ではない)。もちろん個々の地名を列挙するだけでは体系的な把握はできない(第2部で主要地名は網羅した)。

それよりも、抽象的、形容詞的なマリアの名称を、そこにふくまれる概念で大別し、

人々がマリアにどんなイメージを求め、また付与してきたかを知る手がかりとしたい。

マリアの図像学:王座(玉座)に座すマリア像

「王座(玉座)に座すマリア像」(トレンス)を三区分し、下記のように提示します。

 尊厳の聖母子像(マエスタ):その随伴者として、天使、聖人、使徒、聖処女ら、、、

 三重冠(を被るマリア)

 ソロモンの王座(上智の座)

 聖職者としてのマリア:例外的な図像、

  以上を「狭い意味での」王座に座すマリア像と考えます。

次いで、

 謙譲のマリア:地上に座ったり、尊厳より情愛を示すなど、王座の尊厳とは

  異なる、しかし、王冠を被ったりとその境界は必ずしも明確でない図像、

 と 

 授乳(御子イエスに)のマリア:やはり、尊厳とは異なるが、その境界は必ずしも明確で ない図像、なお(御子イエス以外に)「授乳」するマリアは「能動的にとりなす」図像でも登場する

  で一つのグループ、そして最後に

「開くマリア」(マリアの胎内が開き、御子、三位一体、聖遺物といった内容を

含む、ややグロテスクな感もある図像、

 と「黒いマリア」像という、やはり謎の多い図像グループです。

  マリアの胎内に御子がいる図像は「喜びを黙想する」にある、

「懐妊、希望」のマリア像とも似ています。

2007年3月 4日 (日)

マリアの図像学:喜び(を黙想する)図像像

トレンスの「マリア図像学(系統)樹」では

祈る→黙想→喜びはさらに二大別され、一つは「無原罪の御宿り」のグループ、

もうひとつは以下の図像からなるグループです。このグループの二区分を

試みることで三区分を提示します。

黙示録のマリア、時の初めから先在する

  黙示録のマリア:翼のある、

  シビル(巫女)の予言したマリア: ティブルの巫女の予言と、パトモス島における聖ヨ              

   ハネの幻視に関連、

グアダルーペのマリア:黙示録のマリア、のように「天上の出現」と関連、

  「出現のマリア」(いわゆるマリア出現、を含む)

希望、懐妊(またはO(図像名))のマリア:

 御子イエスを懐妊しているマリアを描く図像、このグループのなかで

 独立したグループとみなせる

 麦穂のマリア:希望、懐妊のマリアの類似とトレンスは捉えている;

  いろいろな解釈ができる重要な図像タイプだがとりあえずここに配置する

 腰布のマリア:トレンスはここに配置しているが、出来事としてはマリアが

 被昇天に際し、疑いを持つ使徒トマスに腰布を与えたという伝説に基づく。

 

 いずれにせよ、懐妊、希望のマリア、を独立させ、

 黙示録(先在)のマリア、懐妊・希望のマリア、無原罪の御宿りのマリア、

 と三大別したい。

マリアの図像学:「祈る」マリア像を三区分

トレンスの分類による、マリア像の区分:第一段階は「祈る(立っていることが多い?)」、「王座(に座す)」、「図像学的ディティール」の三つでした。第二段階は更に三区分を続けます。

 第一段階と色との関連づけは、「信仰、希望、愛(カリタス)」の三区分(対神三神徳ですが、知恵の擬人像であるソフィア(上智)の三人の娘、という位置づけもある、アンブロージオ・ロレンツェッティの絵がある)を紹介する時にあわせてします(因みにこの三つの色は信仰:白、 希望:緑、 愛:赤 です)。「カリタス(愛、慈愛)」の擬人像は二人以上の幼児に授乳する女性像として描かれることが多く、「授乳するマリア」像(幼児に授乳する時は御子イエス一人)との比較も興味深いところです。

 さて「祈る」マリアは「黙想」して祈る、と「能動的に」祈る、の静と動に二分されますが、ここでは三区分を採用していますので、「黙想」の下位区分を昇格させ、「喜びを黙想して祈る」「悲しみを黙想して祈る」「能動的に祈る」を提示します。

次回は「王座に座す」マリア像の三区分を提示します。

2007年3月 3日 (土)

マリアの図像学:分類方法

マリアの図像を図像学的に分類する試みを提示します。

ヒントはスペイン語の文献、トレンスのMaria: Iconographia de la virgen

en el arte espanola にある「図像学的系統樹」です。

スペインの図像に限定されている点や、単独像が主であることなどへの

対処を施し(改悪でないことを願いますが)、わかりやすいように

赤青緑の三区分を必要なだけ繰り返すことで分類する、という方法を

模索しました。

 まず最初の三区分は以下のとおりです。

1.マリアが祈る(この「祈る」は広い意味です)図像、

2.マリアが王座に座す図像

 (この「王座」も広い意味で、王座の尊厳とは相反するような

「謙譲のマリア」や「授乳するマリア」などを含む:これは

広い意味での「祈る」に含まれない図像と解してよいと考えます。

3 図像学的デティール:

 これは1,2以外の図像像ということではなく、マリアや御子イエス、その周囲に

含まれる主要人物以外の様々な要素を抽出し、分類したものです。

 たとえば1、か2、に該当する図像のデティールとして何が含まれるか

といったことです。

 次回はこの1.2.3をさらに三区分した状況を説明します。

マリアの切手:ザール、1954年8月

Photo_3 Photo_4 このブログの顔ともいえる3枚の切手について紹介します。

個々のデザインは有名な美術作品の一部をクローズアップしたもので

あえて説明を要しないほどです。

 切手は1954年にザール(現フランス、ドイツ間のアルザス・ロレーヌ地方)から、

Photo_5 1954年8月に「マリア年」(カトリック教会が「無原罪の御宿り」という、マリアに

関する教義(信ずるべきとした事項)の制定100周年を記念して、この年を

マリア年とした)を記念して発行されました。切手のテーマとしてキリスト教やマリアは

大きなテーマです。

Book デザイン別 切手収集大百科―テーマチク・コレクション100

販売元:日本郵趣協会
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 マリアの切手について詳しいことはここにリンクを設定した、マリアのホームページ

切手のみならず、マリアの全てを紹介しています。

 文献では外国の切手カタログの他、「マドンナ・スタンプス」(1961年、ページ表示無いが32ページ)という、アメリカの宗教切手グループが発行したチェックリスト(内表紙がこの3枚を縦に並べています)や、「ガブリエル・国際百科:切手の上のキリスト教モティーフ」(1990年、1046列{1ページ2列で実際は523ページ)内の「マリア」(620列、他の項目への参照指示のみの親項目)や「マドンナ(聖母子像)」(587列~607列)という項目などが参考になります。

マリアの予型論(その2)

(続き)予型論はタイポロジーとも呼ばれ、「岩波キリスト教辞典」はこの名で

立稿しています。旧約と新約の対応ということは最小一対一の対応でよいことに

なりますが、有名な神学者アウグスティヌスの「世界史は三つの時期に分けられる」

に基づき(図像学では)三つの対応を描くこともあります。

 以下、「歴史読本」シリーズの記事(新人物往来社、詳細は前回の記事参照)からの

引用です。

「三つ(の時代区分)とは、

一、モーセが律法を授与される以前の時代(「創世記」から「出エジプト記」一八章まで)

二、モーセが律法を授与されて以後の旧約聖書の時代

三、イエスの宣教した福音の時代(新約聖書の時代だけでなく、最後の審判までの

 人類の全歴史を含む)、 です。

こうした予型論は当然マリアにおいても盛んで、その全てを述べることは

マリアの図像学全てにほぼ匹敵するほどです。マリアの象徴(シンボル)と

されるものは予型論から導きだされたと考えられます。というのは予型論は

聖書、キリスト教にとどまらず、他の非キリスト教的文献からも「予型(もとの

タイプ)」を探そうとしたからです。こうした行き過ぎを批判するとすれば

(語呂合わせで申し訳ありませんが)「余計な予型論」というわけです。

次回はマリアの象徴(シンボル)や持物(アットリビュート):図像学において

重要な小道具的要素、を紹介します。

マリアの予型論(その2)

(続き)予型論はタイポロジーとも呼ばれ、「岩波キリスト教辞典」はこの名で

立稿しています。旧約と新約の対応ということは最小一対一の対応でよいことに

なりますが、有名な神学者アウグスティヌスの「世界史は三つの時期に分けられる」

に基づき(図像学では)三つの対応を描くこともあります。

 以下、「歴史読本」シリーズの記事(新人物往来社、詳細は前回の記事参照)からの

引用です。

「三つ(の時代区分)とは、

一、モーセが律法を授与される以前の時代(「創世記」から「出エジプト記」一八章まで)

二、モーセが律法を授与されて以後の旧約聖書の時代

三、イエスの宣教した福音の時代(新約聖書の時代だけでなく、最後の審判までの

 人類の全歴史を含む)、 です。

こうした予型論は当然マリアにおいても盛んで、その全てを述べることは

マリアの図像学全てにほぼ匹敵するほどです。マリアの象徴(シンボル)と

されるものは予型論から導きだされたと考えられます。というのは予型論は

聖書、キリスト教にとどまらず、他の非キリスト教的文献からも「予型(もとの

タイプ)」を探そうとしたからです。こうした行き過ぎを批判するとすれば

(語呂合わせで申し訳ありませんが)「余計な予型論」というわけです。

次回はマリアの象徴(シンボル)や持物(アットリビュート):図像学において

重要な小道具的要素、を紹介します。

マリアの予型論

マリアの図像学にかかわる時代区分の二つ目を紹介します。

(一つ目は1~8世紀、9~12世紀、13世紀~現在、で

赤:考古学、緑:過渡期、青:として紹介)

それは「予型論」によるもので

「新約(聖書)のなかで実現するイエスの誕生・処刑・復活・昇天は

すでに旧約(聖書)において予告されていた。旧約と新約をめぐる

「約束」と「成就」の関係は、古くから予型論として考察されてきた」

( 「目でみる予型論」、歴史読本ワールド創刊号「聖書の世界」、254-259ページ、1990年4月、  別冊歴史読本、第20巻3号「聖書の謎百科」、448-456ページ、1995年1月に再録)   (以下 続く)

 

2007年3月 2日 (金)

マリアの考古学

マリアの考古学、といった場合はキリスト教考古学の一部と理解するのが

通常であり、考古学、図像学、美術史の違いはたとえばマイりストに挙げた

「新カトリック大事典」などを参照頂きたい。

 ここでは少し拡大解釈をして最古のマリア像の起源を同時代の

他の宗教その他に求める分野をも「比較文化史」的に

「考古学(起源を探る)」としておきたい。

 女性像としてのマリアはギリシア神話の女神たち、

アフロディティやアテナ、やエジプトの女神とその子、

イシスとホルス像、や旧約聖書の女性たち、

エバやエステルなど、との比較によってその

起源の一端が辿れる。4、5世紀頃までの

母子像、羊飼いの母子を描いた石像、などは

キリスト教の聖母子像と似ており、形態、図像学

的にはモデルと考えられる

( ジェームス・ホール著、邦訳無し、

「イタリア美術におけるIdeas and Images」:

ホールの「西洋美術図像事典」(河出書房新社)は

翻訳されて広く親しまれているが、この通史もすごい本で

翻訳してほしいもののひとつ)

マリアの美術

マリアの美術と考古学、図像学といった関連領域を整理してみたいと思います。

美術という言い方に対しては、私の主観的に

すぎるかもしれませんが「傑作主義」という含みが感じられ、図像学との関係では

「造形芸術」との言い方の方がしっくりします。

 また図像の起源、~8世紀くらいまでの時代はローマのカタコンベ(「キリスト教徒

(だけではないが、マリアとの関連は彼らに限る)の地下墓所)のように

図像学は美術というより考古学の領域と渾然一体となっています。

タイトルと少し異なるかもしれませんが、時代の三区分の最初、

赤の時代を「考古学」の副題とする理由の説明にいたします。

 赤は土の連想で「大地、発掘、考古学」ともイメージできます。

「考古学ライブラリー」という考古学のシリーズ(現67巻まで)が

赤系統のカヴァーなのもこうした連想からかもしれません。

 ついでに申し添えますと時代区分の残るひとつ、

「青」は13世紀~現在、です。緑が中間、過度期の色なので

残る色は青しかないからですが、現在のマリア像を記述する際、

何かのヒントになるかもしれません。

 次回はより広い時代を対象にした時代の三区分、

キリスト教の歴史観である「予型論」による区分を紹介します。

歴史の始まりから終わりまでを対象にしていますので、

マリア図像学において、天地創造の頃(マリアと対比される、

原初の女性たるエバが登場)や最後の審判の時「(マリアのとりなし

により判定が変わってしまうかもしれない、、、、キリストが

唯一の神、というキリスト教の根幹からは少し外れた信心)の図像を

分類する際の時代区分となります。

時代区分:緑(過渡期) 9~12世紀

「マリアの図像学(4)」より引用します。

「テオトコス(注:神の母としてのマリア)を主とする8世紀迄と、マドンナ(注:聖母子像の

別称であるとともに、親愛の側面を強調する用語)を主とする13世紀以降、にはさまれた

時代はマリア像における様々な試み、後の開花の萌芽がみられる。

 通常の聖母子像はキリスト教における救済史(旧約聖書と新約聖書の記述を、

神による人類の救いの総体として理解する歴史観)における受肉

(神の子イエスが人間となる)の表現である。

 それに対して、救済史においてマリアの占める位置を示す図像がある。

マリアと、聖書に登場する人物や神学的な擬人像との対比、同一視により

もたらされた図像もそのひとつである。

それがエバ、黙示録の女、そしてエクレシア(教会の擬人像)、雅歌の花嫁、等である。

これらをマリアと同一視することは東方では見られない現象であることからも、

西欧初期中世を特色づける図像と見なしうる」

 長々と引用しましたが、9~12世紀を中間期間と区分することの根拠の

提示になっていると考えます。

 次回は歴史記述の5W1Hの順で

いつ、に次ぐ どこで、などを示します。そして

マリアの図像学という核心以外の、

美術史などの用語は

「岩波西洋美術用語辞典」(益田朋幸、喜多崎親、

 岩波書店、2005年)の用語分類表に準拠して

分類する予定です。

赤青緑による区分(続き)

3枚の切手がどういう切り口での赤青緑の区分を示すかです。

    作者、 国 、 キリスト教の宗派 、 御子イエスとマリアの姿、

赤:ホルバイン、イギリス(活動した国)、イギリス国教会、御子イエスはマリアの左手側、

青:デューラー、ドイツ、プロテスタント(の発祥地)、御子イエスはマリアの右手側、

緑:ラファエロ、イタリア、カトリック、御子イエスはほぼ正面を向く、

 宗派の分類は別のより広範なもの、たとえばカトリック、プロテスタント、正教会、

という区分も可能です。いずれの場合も「その他」の扱いは一番近い色に収める

のが妥当です。次回は時代区分で中央値を「9~12世紀:テオトコスからマドンナ

への過渡期」とした試みを説明します。(「マリアの図像学(4)」 東海大学文学部紀要

赤青緑による区分について

文献からいったん離れて、赤青緑による区分という方法について提示いたします。

3枚の切手を見ていただくとおわかりのように3原色で何らかのテーマを区分する

ことは正確さを多少犠牲にしてもわりきったわかりやすさがあります。

実際はこの3枚の原作はこの色ではありませんが、こうして提示されたのに見慣れ

ると元からこうなっていたかのように思われ逆に固定概念の怖さも感じます。

さてここでの赤青緑が何かといえば、様々な切り口が考えられます(以下 続く)

     作者    国    宗教           御子イエスの姿

赤:ホルバイン、ドイツ、プロテスタント(の発祥の地)、マリアの左手側

2007年3月 1日 (木)

シラーの「キリスト教美術の図像学」

シラーの「キリスト教美術の図像学」は全5巻7分冊からなる大著で、「マリア」については

第4巻第2分冊「マリア」のみならず全巻に記述があります。これだけの大著ですので

著者の途中の予告通りには完結せず、最後の審判、三位一体、(旧約聖書)は

含まれずじまいでした。

 ささやかながら、全5巻の抄訳(紹介)を試みる際には、もしあったならば

最後の審判、三位一体、(旧約聖書)の巻で「マリア」に関する記述が

どうであったかなどを想像していきたいと思います。

 ここでは一言だけ苦言を、すなわち著者自身も述べているように

単独のマリア像については、東方(ビザンティン帝国など)と西欧に

分け各約10ページ、約40ページを費やしているものの不十分な

扱いにとどまっていることです。

 逆にマリアの生涯、説話的図像については「マリアの図像学」の基本的文献にふさわしいといえましょう。

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マリアに因む音楽

  • 聖母(マドンナ)たちのララバイ
    岩崎 宏美:

図像学区分:第二段階

  • 第一区分一第二区分一:喜びを黙想して祈る図像
  • 第一区分一第二区分二:悲しみを黙想して祈る図像
  • 第一区分一第二区分三:能動的に祈る図像
  • 第一区分二第二区分一:(狭い意味で)マリアが王座に座す図像(マエスタ、上智の座など)
  • 第一区分二第二区分二:謙譲のマリア像(地上に座ったり、尊厳より情愛を示す、しかし王冠を被ったりと「王座のマリア像」との区別は必ずしも明確ではない)
  • 第一区分二第二区分三:開いたり、黒いマリア像(やや異教的、グロテスクな印象もある)、懐妊・希望のマリア像とも似る
  • 第一区分三第二区分一:アトリビュート(動物、植物、その他)
  • 第一区分三第二区分二:御子(やマリア)の仕草
  • 第一区分三第二区分三:衣装;髪飾り、髪型、履物、人工の装い、材質、図像の置かれた場所、コンテクストなど

マリアの有名なイメージ

  • Strass
    ラファエロなどのマリア像の切手

マリアの図像学を知るために

  • 松本 富士男 (協力 小杉 健): 「情愛の聖母子」彫像の図像学的記述 -13~15世紀を中心に  「キリスト教史学会紀要」 116-92p
    図像学的観察の対象としてフランス、ゴシック時代の大聖堂のトリュモー(支柱)に登場した、親愛を強調した聖母子立像をはじめ32点を図示。頭の先から爪先まで、持ち物も観察、分類した。ちなみに図1はアミアン大聖堂の通称「黄金の聖母子」、キーワードは「視線の交流(いわゆるアイ・コンタクト)」、マリアは斜め上からイエスを見つめる。図7では二人の視線は同じ高さで向き合い、図8では二人の視線は向き合わない。
  • 松本 富士男 ( 協力 小杉 健 ): マリア像の変遷 立教大学チャペル・ニュース  1987年から1991年に掲載 31回+α
    「最古のマリア像」 (1987年4月)でローマのカタコンベ(地下墓所)に見られる図像などを紹介。 「マリア像の成立」 (1987年6月)では「神の母」としてのマリアへの崇敬が確立した431年のエフェソ公会議を中心に当時の代表的図像を紹介。 1987年1月からは「マリア像の変遷」として「マリア・オランス(祈るマリア)」を(1)と題し、ほぼ時代順にマリア像の変遷を記述。1990年4月の(24)20世紀前半、続く (25)の「現代のマリア観」で一段落した。ついで(26)からは視点を変え、服飾、図像に表現された喜び、悲しみ、マリア像の胎内に何かを含む図像として、御子イエスを含む「懐妊、希望のマリア」像、それ以外を含む彫像、聖遺物容器としてのマリア像を紹介した。 なお、クリスマス、12月号では関連記事とするため、 (11):1988年12月では1988年に日本で刊行されたマリアに関する本の紹介、降誕図像を中心に、フランスの聖母子像を集大成したヴロベルクの著作を紹介した。  (21):1989年12月ではサンタ・クロースに因み 彼や聖ニコラウスとマリアが同時に描かれた図像を紹介した。
  • 松本 富士男 ( 協力 小杉 健 ): マリアの図像学(3):名称、形態の分類 東海大学文学部紀要 52(1990年) 122-86
    内容を順次 紹介していきます
  • 松本 富士男 ( 協力 小杉 健 ): マリアの図像学(2) 日本の展覧会で展示されたマリア像 東海大学文学部紀要 49 1988年
  • 松本 富士男 ( 協力 小杉 健 ): マリアの図像学(4) 西欧 9~12世紀のマリア像 テオトコスからマドンナへの過渡期 東海大学文学部紀要
  • トレンス、 : マリアの図像学的系統樹 ( 書籍内のはさみこみ部、 スペイン語)  図像学的分類の枠として変更を加え試行中
  • 松本 富士男: イエス像の変遷 (関連テーマとして) 立教チャペル・ニュース 1974年12月~1981年2月 61回連載
    全61回、マリアに関する部分を順次 紹介していきます
  • 松本 富士男 / 小杉 健: マリアの図像学 
    聖公会出版  2008年7月 定価3150円   A5 44,7,226ページ
  • 若桑みどり: 聖母像の到来
    16,17世紀における日本のキリスト教美術を世界史の文脈に位置づける試み。、、、日本において、東西の宗教文化を融合した「マリア観音」が成立したことを本論ははじめて明らかにした。 2007年に千葉大学より名誉博士号追贈

マリア図像学の項目

  • マリア図像学の分類体系と本ブログの分類について
    マリア図像学の分類体系は幾つかの文献で提唱されています。本ブログは主にスペインのトレンスによる系統樹と、マリアに限らず図像分類の標準システムであるiconclassに基づき、独自の三区分分類BGRにより両者の異同も示しつつ、マリア図像学の醍醐味に迫ろうとしています。

図像学的区分:第三段階

  • 喜びを黙想、その1:黙示録(先在)のマリア像、時の始めからある
  • 喜びを黙想、その2:懐妊・希望のマリア像、御子イエスを懐妊している時期のマリア像:受胎告知(3月25日)からクリスマス(12月25日)まで
  • 喜びを黙想、その3:無原罪の御宿りのマリア像
  • 悲しみを黙想する、その1:悲しみの予感を示す図像、御子イエスが十字架を持ったり、マリアが受難の予感に沈む図像など
  • 悲しみを黙想する、その2:悲しみの実体験を示す図像、ピエタなどイエスの亡骸を抱くマリア像など、幼児イエスを抱くマリア像と似ることも
  • 悲しみを黙想する、その3:その他、7つの悲しみを示す図像やぶどうの樹(十字架にかかったイエスを含み、単なる持物としては分類しにくい)を持つマリア像など
  • 能動的に祈る、その1:とりなすマリア像(審判にて、煉獄にて、災疫に際して)
  • 能動的に祈る、その2:守護するマリア像のうち、「守護のマント(ミゼリコルディア;慈悲)で人々をかくまうマリア像、と(祈り、または数珠状の持物の意味で)ロザリオのマリア像、の2大グループ

マリアの切手

  • ザール、1954年8月   ホルバイン、ディティール、   ラファエロ、ディティール   デューラー、ディティール

図像学的区分:第一段階

  • 第一区分一:マリアが祈る(広い意味で)図像
  • 第一区分二:マリアが王座に座す(及びその対立例)図像
  • 第一区分三:図像学的ディティール

マリア像の変遷、詳細

  • 最古のマリア像
  • マリア像の成立
  • (1)マリア・オランス(祈るマリア)
  • (2)尊厳のマリア(王座に座るマリア)
  • (3)立っているマリア像
  • (4)左腕に(御子を)抱くマリア像
  • (5)情愛のマリア(その三つの型)
  • (6)守護・とりなしのマリア
  • (7)西欧のマリア像の成立
  • (8)ロシアのマリア像
  • (9)美しのマリア像への発展
  • (10)イタリア・ルネサンス幕開けまで
  • (11)クリスマスにちなんで:1988年に日本で発行されたマリアの本
  • (12)15世紀のマリア像
  • (13)黙示録の女,守護のマント、ロザリオのマリア
  • (14)イタリア・ルネサンス盛期
  • (15)無原罪の御宿りのマリア像
  • (16)15世紀ドイツ圏のマリア像
  • (17)ルターのマリア像
  • 18.バロックのマリア像
  • 19.新たなイメージと啓蒙時代
  • 20. 18世紀(続き)
  • 21.クリスマスにちなんで:サンタクロースとマリア
  • 22. 19世紀前半
  • 23. 19世紀後半
  • 24. 20世紀前半
  • 25. 現在のマリア観 (20世紀後半)
  • 26. マリアのファッション: 女王としてのマリア;ローマ、5~9世紀
  • 27. マリアのファッション:西欧中世
    マント:他者をかくまう服飾、 戦闘服を着たマリア; アルブレヒト祭壇画;中世マリア観の集大成となる連作から、 司祭服を着た(聖職者としての)マリア、 麦穂をちりばめた服を着たマリア、 マントの変遷、からなる
  • 28. マリアのファッション、バロック;聖と俗のはざま
    女羊飼いとしてのマリア、 マリー・アントワネットに言及 巡礼者の服装をしたマリア、移動する(巡礼する)不思議なマリア像、などからなる
  • 29. クリスマスにちなんで;喜びを待つこと、待降節のマリア像
    懐妊したマリアが月満ちて、降誕を迎えんとする間、の マリア像: 「待降節のマリア像」とも呼ばれ、 また妊娠に相当する欧米語は「期待、希望」の意味も あり、こうした図像をあわせ紹介した
  • 30. 悲しみ; 受難とあがないにおけるマリア像
    カルロ・ドルチの「親指のマリア」、 幼児イエスと、十字架刑後の亡骸イエス、 それを抱くマリア像がときに似ている例、 深い意味での共通点などを述べる
  • 31. 西欧マリア彫像の成立
    懐妊しているマリア像を紹介済みだが、マリアの 胎内に描かれたのは御子だけではなかった。 子なる神だけでなく三位一体や生涯連作が 含まれたり、聖遺物容器として内部に聖遺物が 収納された例などを紹介

切手が伝えるマリアの図像学

  • 小杉 健: 切手が伝えるマリアの図像学

マリアに因む人

  • 若桑みどり
    本 「聖母像の到来」の著者

マリア像の分類120項目

  • 分類1 B:祈る 
     祈る仕草のマリアをここに分類。「信仰」を最も端的に表す図像と言えよう。青を対応させたのは空,天上的なものへの方向性から。顔は伏し目がちが神への敬虔にふさわしく感じられる。iconclass分類 11F8 奇跡、出現、伝説〜マリアの 11F9 マリア崇敬 11F23 マリア(幼児イエス無し):立像 11F231 マリア(幼児イエス無し):立像:オランス(ブラケルニティッサ) 11F233 マリア(幼児イエス無し):立像:地球の上に立つか休む 11F236 マリア(幼児イエス伴うことも):立像:麦穂のマリア
  • 分類2 G:王座に座る  
     御子イエスを膝にのせ王座に座るマリアをここに分類。マリアは自分の幼な子を抱く喜ばしげな母ではなく,ロゴス(神の御言)であるイエスを膝にのせた「上智(御言)の座る所」として尊厳な様子で描かれる。この図像が「上智の座」,「尊厳」(マエスタ)の名前で呼ばれる所以である。なぜ「希望」と対応づけたかは懐妊と希望が欧州語では同一語のことが多く,「イエスの座す(宿った)」ところとしてのマリアをイメージさせるから。希望をイメージさせる色は緑。また変種のひとつ,田園のなかのマリアはドイツ語で「緑の中のマリア」とも呼ばれる。顔は毅然とした,それでいて優美なイメージがふさわしく感じられる。 iconclass分類 11F24 マリア(幼児イエス無し):座像  11F243 マリア(幼児イエス無し):座像:マリアと一角獣 11F244 マリア(幼児イエス無し):座像:王座に座す
  • 分類3 R:情愛,細部 
    「情愛のマリア」はマリアの神の母としての尊厳よりも御子への愛情や2人の親密さを強調する図像で、「授乳するマリア」や「頬を寄せ合う図像」など。またマリアとイエスの情愛を示す様々な事物が登場。愛は心臓などのイメージで赤。顔は柔和な,ときに活発に近い感情が現れるのがふさわしく感じられる。 iconclass分類 11F1 マリアの象徴と予型 11F7 特定の部分:マドンナの表現 11F74 特定の部分:マドンナの表現:その他の特定の部分 11F741 特定の部分:マドンナの表現:その他の特定の部分:幼児としての洗礼者ヨハネ
  • 分類4 BB:喜びを観想する
     祈りを内面の祈り(黙想,観想)と,外に現れた祈りの活動,成果に二分。キリスト教の修道会などを観想と活動に大別するのに対応。内面の祈りは喜びと悲しみに区分(その変種として「栄光」もある)。祈る仕草のマリアを見るとその内面まではわからないが喜びが大半である。 iconclass分類  11F242 マリア(幼児イエス無し):座像:喜びのマリア
  • 分類5 BG:悲しみを観想する
     マリアの悲しみの最たるものは御子イエスの受難,十字架刑での死。こうした悲しみの場にいるマリアやそれから派生した図像を分類。ただし喜びと悲しみは峻別されるとは限らず喜びと混合したような図像もある。 iconclass分類  11F25 マリア(幼児イエス無し):「マーテル・ドロロサ」悲しみの聖母 11F251 マリア(幼児イエス無し):「マーテル・ドロロサ」泣くマリア 11F252 マリア(幼児イエス無し):「マーテル・ドロロサ」剣で貫かれる 11F253 マリア(幼児イエス無し):「マーテル・ドロロサ」受難具を伴う 11F241 マリア(幼児イエス無し):座像:悲しみのマリア
  • 分類6 BR:活動的祈り 
     内面の祈りに対して,外に現れた祈りは具体的に描かれる。祈る仕草以外にも祈りとその成果を示す図像があり,多くのマリア像が含まれる。  祈りの道具であるロザリオ(数珠に似る)を含む図像,人々の祈りをかなえるため「守護するマント」で人々をかくまう図像,人々の祈りを神に仲介する「とりなし」の図像に三区分。とりなしに応じ人々の守護聖人となっているマリア像はその強力さ,尊厳が「王座に座す」マリアに近いものがある。 iconclass分類 11F63 マドンナ(幼児イエスを伴う)、他の人物が伴うか周囲にいる:幼児イエスがいないこともある、団体の守護聖人として
  • 分類7 GB:王座の左右と内部の変化 
     王座に座すマリアの左右には最初マギーや天使,次いで様々な聖人たちが描かれる。最初は王座と周囲を仕切る境界,枠が明確。  次いで中央の聖母子と左右の聖人との間で,枠状の仕切りがなくなり両者が意味上も同一空間内に置かれるという変化が起こる。こうした、聖人が聖母子と同列に描かれている図像タイプを「聖会話」(サクラ・コンヴェルシオーネ)と呼ぶ。両者が精神的に会話を交わしているように感じられるからである。祭壇画の主要形式であり続けたのは依頼主(修道会や後には富裕な個人)と関係の深い聖人を配するのに都合のよい形式であったからである。  もうひとつ王座自体,というより「王座としてのマリア」自体の変化がある。「開くマリア」像は観音開きに内部が開く彫像で土俗的な印象が強い。懐妊時期のマリアを描く図像では御子イエスが胎内に描かれるがそれとはまた違う図像である。マリア内部に遺物や神が含まれるとその姿は非キリスト教の女神像に似てくる。そこで「黒いマリア」という,非キリスト教的要素の強い図像もこの下位区分に分類した。 iconclass分類 11F6 マドンナ(幼児イエスを伴う)、他の人物が伴うか周囲にいる 11F62 マドンナ(幼児イエスを伴う)、他の人物が伴うか周囲にいる:特別の図像タイプ 11F621 マドンナ(幼児イエスを伴う)、他の人物いる: 「天の女王」「天使の女王」「マエスタ」 それぞれ別タイプ
  • 分類8 GG:王座の上への変化 
    「王座の聖母子」で王座が地面よりかなり高い位置にある場合は「雲の上の聖母子」に近い構図となる(ジョルジョーネの「カステルフランコの聖母子」)。ラファエロの「フォリーニョの聖母」は更に高く、空中に出現した聖母子を描いており「黙示録の女」の天空の出現を彷彿とさせる。次いで地上をはるか離れ,天上に達したマリアは浮遊感も無く,別の図像タイプとなる。 iconclass分類 11F5 マドンナ(幼児イエスを伴う)、空中または雲中
  • 分類9 GR:王座の下への変化  
    上への変化が天上,神的なものへの接近とすればこちらは人間的要素の強調。王座に座り授乳するマリアはかなり早くから美術に登場。王座を離れ,地面に座すマリアは「謙譲」というキリスト教の徳を表現。その地面には花が咲き,草が柔らかなクッションとなることも。「閉じた園」,庭全体もマリアの象徴。地面に座って授乳するという両者混合の図像も。 iconclass分類 11F43 マドンナ(幼児イエスを伴う):マリアは地面に座す、幼児イエスは彼女の膝の上に
  • 分類10 RB:マリアとイエスの周囲の事物 
    「尊厳」より「情愛」を強調する図像では細部に様々な要素が描かれる。ただしマリアとイエス以外のそれらは必ずしも情愛を意味するものではない。図像学的にみれば象徴,アトリビュート(持物)などに区別。 iconclass分類 11F11 マリアの象徴 11F111 マリアの象徴:連祷から 11F112 ロレトの連祷の象徴を伴うマリアまたはマドンナ 11F15 マリアの予型
  • 分類11 RG:イエス 
    マリア像においてイエスは最重要なマリアのアトリビュート(持物)といえる。イエスをマリア以下にみなすということではなく図像ごとに相対的な重要度。服飾は本人に一番近い周囲。 iconclass分類 11 F 4 マドンナ(幼児イエスを伴う) 11 F 7 1 特定の部分:マドンナの表現:幼児イエスの部分
  • 分類12 RR:マリア  
    マリアその人の分類。周囲との関係:服飾(持物を含む広い意味で),次に周囲とイエスとの関係含まない,マリア本人の様子,最後はマリア像自体と周囲の関係。その図像がどういう場所,文脈にあり,どういう人にどう解釈されるかという相対的な分類。  各人の心の内なるイメージとして,どんな顔をしているのか,色がついているとしたらどんな色かといったことで、正解があるわけではなく主観的なイメージで,「美し」や「センチメンタル」といった価値判断も登場。  iconclass分類 11F2 マリア(幼児イエス無し) 11F26 マリア(幼児イエス無し):その他の型 11F3 マリア(幼児イエス無し)、他の人物伴う
  • 分類13 BBB:喜ばしい存在マリア 
    マリアの存在そのものが喜ばしいと考えられている(「すべての人はわたしを幸いと言うでしょう」とのマリア自身の言葉)。マリアの起源を示す図像は他の女性像からの流用,対比や同一視から次第にマリア独自の図像へと発展。他の女性像はマリアに似ているため,マリアでないかどうか曖昧な場合もある。
  • 分類14 BBG:無原罪の御宿りのマリア像  
    マリアは人類の原罪を負うことなく母アンナの胎内に「宿り」,清らかで「無原罪」であるとする「無原罪の御宿り」のマリア像が登場する。この区分にはマリアの両親や祖先が誰であったかを示す「系図」に関する図像も含めた。 iconclass分類 11 F 2 3 2 マリア(幼児イエス無し):立像:イマキュラータ、ピュリッシマ
  • 分類15 BBR:生涯で最も喜ばしい時期  
     マリアの生涯で最も喜ばしい時期,(イエス)降誕はクリスマスの主要テーマである。ここでは降誕に至る出発点,マリアが身ごもったことを天使が告げる「受胎告知」から降誕前後までを三区分した。なおマリアの喜びを総括した図像はロザリオ,喜びで扱う。
  • 分類16 BGB:受難以前の「悲しみ」 
     悲しみを「受難」を中心に三大別した場合の前史にあたる。「幼児イエスを抱いたマリア像」と「ピエタ(成人イエスの遺体を抱いたマリア像)」とは全く別の意味に思えるが、通常の聖母子像は情愛に満ちた母と幼児、ピエタは悲しみに満ちた母と子という区別は必ずしも正しくない。聖母子像でも幼児イエスが眠っていたり,十字架を持っている場合は将来の受難を暗示し、悲しみが示されている。またぶどうは受難の象徴でもあり,情愛を示す果物類と若干異なる。
  • 分類17 BGG: 受難そのものの悲しみ  
     イエスの受難は十字架刑を中心にマリアの悲しみを示す。受難の「連作」としてヴィア・ドロロサ(悲しみの道行き)がある。
  • 分類18 BGR:受難以後の「悲しみ」「栄光」
    受難以後のマリアの生涯は悲しみに満ちたものであったと想像される。しかしこの時期のマリアを描く図像は少なく,マリアの生涯の最後の出来事「マリアの死」、「マリアの被昇天」について聖書に記述はない。またマリアは「死んだ」という明確な教義はカトリックにはない。ただし最後の出来事「被昇天」は悲しみというより,地上から天国へと至る「喜び」,より正確には「栄光」を示すとされる。栄光という分類は意味は喜びに近いがマリアの生涯の最後との関連で生じた図像なのでここに分類した。 iconclass分類 11 F 2 6 4 マリア(幼児イエス無し):修道女として(キリスト死後):孤独の聖母
  • 分類19 BRB:ロザリオなどの祈りの道具 
     ロザリオは珠数に似た祈りの用具でこれを用いた祈りもロザリオと呼ばれる。その起源はドミニコ修道会の創始者ドミニクスがマリアからロザリオを授かった事とする伝説を15世紀の同会の修道士アラヌス・ド・ルーペ(1475年没)が広めている。ロザリオの祈りでは「父なる神よ」の他に「アヴェ・マリア」が何度も唱えられる。ロザリオという単語はバラ園から派生しているが、神秘のバラといえばマリアその人への尊称である。さらにロザリオの一個一個は「花輪」、様式化されたバラである。用具としてのロザリオは5つ(正式には15)の連(小ロザリオ10個と大1個の組)から構成され、各連に対応してイエス(とマリア)の生涯から15の出来事を玄義として瞑想するのがロザリオの祈りである。 iconclass分類 11 F 6 2 3 マドンナ(幼児イエスを伴う)、他の人物が伴うか周囲にいる:ロザリオの聖母
  • 分類20 BRG:守護のマント
     マリアが腕のマントを拡げてその下に様々な人々を守護している図像である。こうした図像は「守護のマントのマリア」「慈愛のマリア」と呼ばれる、マリアの慈愛、守護への信頼を示す図像である。服飾の特徴が図像名称となっているタイプである。この守護のマントは他者をかくまう機能を果たしている。守護のマントの下にかくまわれる人は個人や特定修道会から人類の全階層へひろがっていく。  前後の分類区分との混合もみられる図像タイプなので下記のような三区分としました。 iconclass分類 11 F 6 2 4 マドンナ(幼児イエスを伴う)、他の人物が伴うか周囲にいる:慈悲の聖母、守護のマントの聖母
  • 分類21 BRR:祈りをとりなすマリア 
     祈りの分類の最後は人々の祈りを神にとりなす存在としてのマリアを描く,「とりなし」のマリア像。どういう状況での祈りか重要度の順に三区分。  最後の審判にて,次に煉獄や臨終にて(個人審判),そして災厄や日常の守護。日常の守護とはパトロン(守護聖人の転用です),「何でもかなえて欲しい」存在としてのマリアで全てのマリア像にこの側面があるかもしれない。 iconclass分類 11 F 3 1 マリア(幼児イエス無し)、他の人物伴う:とりなす(キリストに)、 乳房見せることも 11 F 3 2 マリア(幼児イエス無し)、他の人物伴う:マリアを礼拝したり、 助けを懇願する人のいる
  • 分類22 GBB:王座と周囲の隔離強い 
     王座と周囲の空間は文字通り枠やニンブス(聖なる空間を示すアーモンド型)で区切られるなど隔離が強い。周囲に描かれる人物も最初は個性,区別が無いか少ない。  図像としては降誕の一場面「マギーの礼拝」図として早くから描かれていた。しかし独立した図像として成立するのは5世紀以降で、431年のエフェソ公会議における「神の母としてのマリア」の教義成立の影響が大きい。構図が復元可能な最古のものは5世紀中頃のローマのカプア・ヴェテーレ教会にあった。聖母子の左右に装飾的な葡萄の蔦を配しただけの簡潔な構図である。
  • 分類23 GBG:王座と周囲の人々の交流 
     ついで王座に座す聖母子と周囲の人物は様々な交流を示すようになる。また聖人たちも個性を示し,左右どちらかに位置するかの慣例も現れる。両ヨハネを左右に配する場合。聖女の場合イエスとの象徴的婚約の場面(指輪をはめてもらう)も描かれるようになる。また聖人だけでなく一般人も描かれるようになる(作品の寄進者など)。
  • 分類24 GBR:内部が開くマリア
    左右の変化に対して王座自体,というより「王座としてのマリア」の変化がある。 マリア像の内部が開き,様々な図像が含まれている。容器としての機能という点では聖遺物容器も同様。開きはしないが聖遺物容器としてのマリア像,聖遺物容器に描かれたマリア像もここに分類。また「黒いマリア」という土俗的な図像も非キリスト教の女神像に似ることからここに分類。
  • 分類25 GGB:王座は地上で高くなる
     王座はその尊厳を増すかのように地面よりかなり高く置かれることもある。また特別の例として下にもうひとつの王座を加えた図像もある。 下に「ソロモンの王座」がある図像  王座に座るマリア像の一種で、ロマネスクからゴシックへの過渡期を代表する。ソロモンは旧約時代の叡知あふれる王でキリストを予型する人物のひとりとされる。そうした対比から彼の王座についての記述(列王記上、10章18~20節)が御子イエスを抱くマリアの王座の造形表現に利用されるようになる。その王座の特徴はライオンが描かれていることである。ライオンはまた両ヨハネを象徴することもあり,聖人と動物の混合として後述する。
  • 分類26  GGG:雲中,空中,浮遊感有り
    地上の王座に座していた聖母子が今や高く空中に浮かび足元に雲が描かれている。地上からは聖人が崇敬をこめて見上げることもある。「雲の上の聖母子」と呼ばれる図像タイプである。ラファエロの「サン・シストの聖母」や「フォリーニョの聖母」,ティツィアーノの「アンコナの聖母子」等が代表作である。
  • 分類27  GGR :天上の王座 浮遊感無し
     地上をはるか離れ,天上に達した王座は別の図像といえる。すなわち幼児イエスの姿は無く代わりに「子なる神」としての成人のキリストが描かれる。王座は女王としてのマリアの戴冠のために用意されている。天の女王,天使の女王と呼ばれるマリア像は必ずしもこの分類ではないがあわせて紹介する。  また戴冠ということでは(実在の)地上のマリア像がその権威づけのため戴冠するという教会行事があり,別項で紹介する(王冠,衣装,春の女王など)。
  • 分類28  GRB :授乳 
     マリアが授乳する相手は幼児イエスに限らない。正確にはマリアの胸から乳が出てそれを聖人や煉獄の魂が受け止めるという図像がある。キリストが受難の際に流した血と対比され,マリアの乳も救済のための効力があるとされた。聖遺物としても各地に伝承している。乳を受ける聖人は聖ベルナールが多い。 iconclass分類 11F33 マリア(幼児イエス不在)、他の人物伴う:乳房から乳を与える 
  • 分類29 GRG :謙譲(地面に座す)
    地面に座すマリアは「閉じた園」つまり庭,田園,楽園,天国などの中のマリア,女庭師といった図像名で呼ばれる。また田園風景の中に聖母子や養父ヨセフを描いた「エジプト避難途上の休息」という図像もこの分類に含まれる。垣根などで囲われた庭を描く「バラ垣のマリア」が有名である。楽園と天国の違い,あるいは混合などは歳区分で後述する。 iconclass分類 11 F 4 3 マドンナ(幼児イエスを伴う):マリアは地面に座す、幼児イエスは彼女の膝の上に 11 F 4 3 1 マドンナ(幼児イエスを伴う):マリアは地面に座す、幼児イエスは彼女の前、膝の上に 11 F 4 3 2 マドンナ(幼児イエスを伴う):マリアは地面に座す、幼児イエスは彼女の膝、ひじの上に(マリアの左側に)
  • 分類30  GRR :授乳と謙譲の混合
     前2つの分類の混合,地面に座し授乳するマリアの図像。前項とほぼ同じ下位区分、たとえばエジプト避難途上で授乳するマリア,など
  • 分類31  RBB :動物:王座の周囲の聖人からの続きとして
    マリア像に描かれる事物を動物から始めたのは,王座の周囲の聖人への続きとして。つまり両ヨハネは現実の人物として描かれる他,ニンブス(聖人の徴の円形)のあるライオンとしても描かれた。動物は鳥から始め,哺乳動物,昆虫,伝説の動物その他に分類して紹介。 iconclass分類   動物:王座の周囲の聖人からの続きとして 一角獣は独立して分類 →11F243
  • 分類32  RBG :植物 
     植物と隣接する分類との紛れ。サンゴ枝はマリアの処女降誕の象徴としてマリア像に含まれる。これは中世の人々の理解では動物というより植物に近かった。サンゴ自体は動物で内部に藻が含まれているというのが現代の理解。  また植物と非生物の類似として「帝国宝珠」は既に紹介。
  • 分類33  :非生物 
     人間,動植物以外の事物を非生物としてさらに三区分。「人工物」「非人工物(さらに区分)」で「非生物のなかの非人工物」とは持って回った言い方だが地球とその他の天体など。 細分1:人工物 細分2:非人工物:地球とその構成物:地上,地下,海中など 細分3:非人工物:その他,天体,気象,自然現象(光,虹,隕石など)
  • 分類34  RGB :イエス服飾
    服飾は装身具や持物も含めた広い意味。持物そのものについては隣接区分で紹介済みなのでここではイエスがどのように身につけているか等を扱う。神の子,御子としての尊厳を強調する図像では上下とも着衣で描かれるが,より人間的に描かれ始めると半裸体,裸体も多くなる。また後から被せた服,教会の祝日などに被せられる服もある。
  • 分類35  RGG :イエス本人(服飾と、マリアとの関係除く)
    服飾やマリアとの関係を含まない,イエス本人の様子を分類。年齢は乳飲み子か幼児として描かれる。嬰児としてマリアの胎内に描かれる場合もある。
  • 分類36 RGR :イエス:マリアとの関係
     聖母子の間の情愛を最もよく示す分類。マリアに抱かれる場合,通常心臓のある左(向かって右)に描かれることが多いのは古くからの伝承による。つまり「ルカが描いたとされる」マリア像は「ホディギトリア」と呼ばれ右側にイエスを抱くマリア像。 iconclass分類 11 F 4 1 マドンナ(幼児イエスを伴う):マリアは立つか半身、  幼児イエスは彼女の胸の近くに 11 F 4 2 マドンナ(幼児イエスを伴う):マリアは座るか王座に座す、  幼児イエスは彼女の膝の上(または彼女の胸の前に) 11 F 4 4 マドンナ(幼児イエスを伴う):マリア(立つ)、  幼児イエスはひとり立つ(または彼女に寄りかかる) 11 F 4 5 マドンナ(幼児イエスを伴う):マリアはひざまづく(地面に)、  幼児イエスは彼女の前に 11 F 7 2 特定の部分:マドンナの表現:幼児イエスとマリアの部分
  • 分類37 RRB :マリア服飾
    本人に一番近い周囲として装身具を含む服飾。マリア像の「色」は服飾が大きな比重を占める。悲しみのマリアは通常とは違う色の服であるなど。通常の女性服としての側面の他に,図像に後から被せられる衣装や冠,服飾の機能として他者のための服飾としての「守護のマント」(既述),服飾が図像名となっている「麦穂のマリア」,珍しい服飾として巡礼服や羊飼い服,戦闘服などがある。  逆に服飾品に描かれたマリア像として、スカプラリオという祭服(肩掛けに近い)は様々なタイプがあり,色,マリア像が対応する。  また聖遺物としてマリアの身につけていた服など。腰布はマリアが被昇天の際,疑り深い使徒トマスに投げ与えたという伝説,図像がある。
  • 分類38  RRG :マリア本人 
    周囲との関連を除くマリア本人についてです。「顔」は一番の注目部位です。女性美の表出のみならず,キリスト教の徳「信仰,希望,愛」を様々に表現していると言えましょう。またマリア像につけられた名称と図像タイプとの対応(必ずしも対応しない)も考察対象です。様々な色がマリア像の名称となり,黒,白,赤(褐色),緑,黄金などがあります。 iconclass分類 11F73 特定の部分:マドンナの表現:マリアの部分
  • 分類39  RRR :マリア像の位置,場所,コンテクスト(文脈)
    マリア像自体がどういう関係のなかに置かれているか,を広い視点で扱います。人々の心のなかのイメージとなるまで,図像が複製され,変形しながら流通する過程を追うのが図像学の醍醐味と考えます。 細分1:室内 :材質は本人とも関わる:象牙製の体の曲線など 細分2: 屋内だが室外:建築表面など 細分3:屋外:像の移動,複製,流通
  • 分類40  BBBB:時の始め:創世記の女:蛇を踏む
     創世紀3章15節に登場する「女」である。神はアダムとエヴァを誘惑した蛇に対して「お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意をおく。彼(女の子孫)はお前の頭を砕き-」と言う。旧約聖書は新約聖書の預言と見る予型論的立場から、この彼は救世主イエス、女はその母マリアと解釈される。(男性形、女性形をめぐる解釈史については略)。こうして蛇はマリアの足元の地球(誘惑の舞台)に巻きついて描かれる。
  • 分類41  BBBG :黙示録の女 
     黙示録12章6~8節に記述されている「女」は天に出現し子を抱いて竜から逃れる。その「頭に12の星からなる冠を被り、太陽を着て、足の下に月を踏み」とある。後の箇所で「空で龍から逃げ出した」に基づき羽根が生えて描かれることもある。
  • 分類42  BBBR :その他のマリアを「予告」する女性像
    iconclass分類 図像1:エヴァなど否定的女性像 図像2:ユディトなど肯定的女性像 敵に対する勝利など攻撃的な側面も 図像3:固有名が無い女性像:雅歌の花嫁,シオンの娘 シバの女王42、アビガル42、巫女42、族長42、ラヘル42、リベカ42、サロメ42、 サラ(アブラハムの)42、サラ(ラグエルの)42、ヤエル42、エレミヤ42、イザヤ42、 ユディト42、エクレシア42、エクレシアとシナゴーグ42、ルツ:重複?42、ハバクク42、 エステル42、アウグストゥスと巫女42-図:トレンス25、バテシバ42、
  • 分類43  BBGB :系図
    マリアの系図を示す図像で,マリアの親族を含んだ図像は広い意味でここに含まれます。 図像1:二つの三位一体  ムリリョ作。地上のイエス,マリア,ヨセフの三人の聖家族に対し,本来の三位一体(父なる神,鳩として描かれる聖霊なる神,そして子なる神)を合わせ描く。幼児イエスが両方に属し一度しか描かれていない。 図像2:マリアの両親:アンナとヨアヒム  二人は「金門の前の出会い」という,母アンナによるマリアの懐妊を示す図像でヨアヒムと触れ合っている。 図像3:マリアの従姉:エリザベツ 従姉エリザベツをマリアが訪問した場面でやはり懐妊がテーマ。
  • 分類44  BBGG :多数の象徴で囲む 
  • 分類45  BBGR :少数の象徴で囲む 
    ピュリッシマ
  • 分類46  BBRB :受胎告知とそれ以前
  • 分類47  BBRG :懐妊期 
     妊娠に相当する欧米語は「期待」「希望」という意味も持っている(英語はexpectation、フランス語はesperance,ドイツ語はHoffnung,スペイン語はesperanzaなど)。イエスを妊娠している期間のマリアについて聖書は「マリアのエリザベツ訪問」の出来事を記す。この場面には二人の妊婦エリサベツとマリアが登場しており,妊娠しているマリアの単独像はここから派生した。図像学的には黙示録の女(「女がみごもり」)との関連もある。こうした妊娠の図像が盛んになるのは15世紀以降である。 iconclass分類 11 F 2 3 4 マリア(幼児イエス無し):立像:妊娠しているマリア
  • 分類48  BBRR :イエス誕生とそれ以後 
    図像1:降誕(羊飼いへのお告げ ) 図像2:降誕(羊飼いの礼拝) 図像3:降誕(マギーの礼拝)  が代表的
  • 分類49  BGBB :受難の予感:十字架などを持つ 
     情愛の聖母子に見える図像でも十字架などを持っていると,受難の予感を示す「悲しみ」の図像と解釈できる。
  • 分類50  BGBG :剣で心を貫かれるという預言 
     マリアの生涯で具体的に受難を予感させる出来事は新生児イエスを神殿に奉献する際,シメオンから受けた言葉「あなたの心は剣に貫かれるでしょう」である。実際にマリアが剣で心を貫かれる(受難の時)図像は分類52
  • 分類51  BGBR :その他,エジプト避難など
     この他,受難以前に悲しみと解釈される図像は「エジプトへの避難」である。ヘロデの迫害を逃れるための長旅にある聖家族を描く。 
  • 分類52  BGGB :受難;マリア一人,剣,円環など 
     現実に剣で胸を貫かれるマリアは悲しみの大きさを誇張して示している。 iconclass分類 11 F 2 4 1 1 マリア(幼児イエス無し):座像:マリアの(7つの)悲しみ 11 F 2 4 1 2 マリア(幼児イエス無し):座像:7つの剣で貫かれるマリア
  • 分類53  BGGG :受難;ピエタ(イエスと二人)
     ピエタ(イエスの遺体を膝に抱く)の図像は何といってもミケランジェロ作のヴァチカンにある作が有名。マリアの顔は若く,全体図でなくアップで示されると悲しみとは見えないかもしれない。彫刻の場合どこから見るかで全く異なる印象となるので広く流布している本作でも少数派のアングルといったものがあるかもしれない。
  • 分類54  BGGR :受難;群像,連作,象徴 
     マリアとイエス以外の人物を含む群像,十字架刑を中心とする連作「十字架の道行き」,十字架刑を象徴する図像や「十字架刑像のあるぶどうの樹」などがある。
  • 分類55  BGRB :受難以後の悲しみ
     受難以後の悲しみはマリアと使徒たちとの別れの場面などがある。マリアの生涯の最後の時期は天に挙げられるということから「栄光」の出来事と解釈される。
  • 分類56  BGRG :受難全般も含む,悲しみ連作,栄光 
  • 分類57  BGRR :受難以後 その他 
     単独像として修道女としてのマリア 孤独 Soledadのなかのマリア像 などがあり,老年に描かれることからこの時期にも分類できる。  以下にロザリオの「栄光」の玄義(後述)に描かれたマリアの受難以後の出来事を示す。 iconclass分類 11 F 2 6 4 マリア(幼児イエス無し):修道女として(キリスト死後):孤独の聖母
  • 分類58  BRBB :実物大のロザリオ(バラの花輪)を描く
    マリアが持つ(頭に被る),イエスが持つ,その他(聖人が受け取る,など)がある。 ロザリオと色:「宣教ロザリオ」は各大陸を示す5色で構成される。 青:オセアニア 緑:アフリカ 赤:アメリカ(南北とも) 白:ヨーロッパ 黄:アジア
  • 分類59  BRBG :実物大以上のロザリオ(花輪)が周囲に
  • 分類60  BRBR :ロザリオ個々の玄義,物語,連作 
     ロザリオの15玄義の内訳は「喜びの玄義」(受胎告知、訪問、降誕、イエスの神殿奉献、イエスを神殿で見出す、の5つ)、「苦しみ(悲しみ)の玄義」(園での苦悶、イエスが鞭打たれる、イエスが茨の冠をつけられる、イエスが十字架を運ぶ、十字架刑の5つ)、「栄えの玄義」(復活、昇天、聖霊隆臨、マリア被昇天、最後にマリアの戴冠と天使・聖人の栄光、マリアの戴冠が加わったのは後世)の5つである。
  • 分類61 BRGB ロザリオと守護のマントの混合タイプ:
  • 分類62 BRGG 守護のマント:個人、団体から全人類へ
  • 分類63 BRGR :守護のマント;とりなしとの混合  iconclass分類
    iconclass分類 11 F 3 4 マリア(幼児イエス無し)、他の人物伴う:災厄に対し人類を守護する、 たとえばマントでかくまう、「ペスト像」
  • 分類64  BRRB とりなし:最後の審判で  重要度大
  • 分類65  BRRG :とりなし:煉獄,死後の審判,善死術  重要度中
  • 分類66  BRRR :とりなし:その他  重要度小
  • 分類67  GBBB 王座の左右:マギー 
    人数,左からか,右からかなどが考察の対象である。
  • 分類68  GBBG 王座の左右:天使
     その数,個別化,天使の女王としてのマリアなどである。数に深い意味があるとは言えないが天使が主要要素として描かれる時はガブリエル(受胎告知)やミカエル(最後の審判)など名前も伴っていることが多い。天使には9階級あるとされる。オーストリア,ウイーンにある「天使の9階級」教会のクロスターノイブルク祭壇画は「天使の女王」他さまざまな女王としてのマリアを描く。中世のマリア図像学の集大成といえる作品である。
  • 分類69  GBBR 王座の左右:その他,単純な構図,聖人:列,まだ無個性
     王座のマリアの初期の図像ではマギーや天使を除くと構成要素も少なく,聖人が描かれる時もまだ無個性,名前が特定されない「列」のこともある。 iconclass分類
  • 分類70  GBGB 王座の左右:中央との仕切り枠消える:聖人との交流
     王座のマリアの左右への変化として左右の聖人の個別化,中央の聖母子との交流などが描かれ始める。続く分類に「処女」聖人が,最後の分類に「聖人」以外の俗人が描かれる図像を分類したのでここは聖人(男性)と全般を含む分類である。 iconclass分類 11 F 6 1 マドンナ(幼児イエスを伴う)、他の人物が伴うか周囲にいる:聖人を伴う 11 F 6 1 1 マドンナ(幼児イエスを伴う)、他の人物が伴うか周囲にいる:聖人を伴う:  「聖会話」 11 F 6 1 2 マドンナ(幼児イエスを伴う)、他の人物が伴うか周囲にいる:聖人を伴う: Ueber dich freut sich 正教会
  • 分類71  GBGG :王座の左右;処女聖人の婚約
     聖母子像の左右に描かれる聖人のうち処女聖人(聖女)には独特の図像がある。幼児イエスとの神秘的,霊的婚約を描くものでイエスが聖女に指輪をはめる様子が描かれる。
  • 分類72  GBGR :王座の左右:その他,寄進者など
    聖人以外にも俗人,作品の寄進者なども描かれるようになる。
  • 分類73  GBRB 王座の内部:開くマリアの外面、聖遺物容器
     開くマリアの用途は内部に聖遺物を入れることにもあり、その他の聖遺物容器におけるマリア像も分類
  • 分類74  GBRG 王座の内部:開くマリアの内容物、聖遺物
     生涯の連作,磔刑のイエス,三位一体などがマリアの内部に絵画や彫刻として含まれた。神を含んでしまうことはマリアの方が上位,優位で女神と誤解されるおそれがあるとして非難された。 iconclass分類 11 F 9 2 マリア崇敬:マリアの聖遺物
  • 分類75  GBRR 王座の内部:異教的,黒いマリア
     異教的要素の強い「開くマリア」と似た性格の「黒いマリア」をここに分類した。「黒いマリア」は開くわけではない。
  • 分類76  GGBB 王座が高くなる:階段などで
    王座の上への変化の過程として地上で王座が高くなる様子を76-78に3区分した。最初は階段などで高くされる状態。
  • 分類77  GGBG 王座が高くなる:下に「ソロモンの王座」
     王座が高くされる特別の例としてもう一つの王座が下に描かれた場合がある。「ソロモンの王座」(既述)である。
  • 分類78  GGBR 王座が高くなる:その他 「離陸直前?」
    すでに地上を離れた状態への過渡期として天使が持ち上げ支えている図像である。天使が王座ではなくマリアを支え持ち上げ天に「挙げる」マリア被昇天の図像があり,それとの類似が感じられる。何かを運び空を飛ぶ天使としては「ロレトの聖家族の家」を運ぶ天使が有名である
  • 分類79  GGGB 王座の聖母子の上への変化:空中,王座消えることも 
     「雲の中の聖母子」のように空中に浮かんで描かれる図像がある。地上の聖母子と天上の聖母子(この場合はイエスは幼児ではなく成人の「子なる神」として描かれる。当然のようであるが図像学の文献で明示していることが少ないようなので例外があるのかもしれない。検討したい。)の中間の図像と言える。三区分は検討中で明確な区別基準ははっきりしない。  空中にあるマリア単独像は既に紹介した「無原罪のマリア」や「被昇天のマリア」がある。 かたや下降,かたや上昇するマリアだが,上昇と下降自体は厳密に描き分けられてはいない。 王座の聖母子の「空中」版が細分しにくいことから,残りの二区分は他の区分と重複するが仮に「無原罪のマリア」と「被昇天のマリア」とする。
  • 分類80  GGGG :王座の上への変化:空中の「無原罪のマリア」
  • 分類81  GGGR :王座の上への変化:空中の「被昇天のマリア」
  • 分類82  GGGR :天上:幼児イエス無し,浮遊感無し
     地上を離れ天上に達したマリアは王座に座す際ももはや幼児イエスを抱いていることは無い。また空中にあった際のような浮遊感も無い。こうしたマリアは天国の女王,天使の女王などとして三位一体の神から戴冠したり,教会の擬人像として成人イエスと並び座したりする。
  • 分類83  GGRG :天上:成人イエスとともに
  • 分類84  GGRR :天上:三位一体と共に
  • 分類85  GRBB :幼児イエスへ授乳 
    1:はっきりとした授乳 2:授乳前:乳房を見せる 3:授乳を拒む: 乳房より十字架 iconclass分類 11 F 7 2 6 マドンナの表現:幼児イエスとマリアの部分:幼児イエスがマリアから授乳する、または授乳しようとマリアが胸を開く 11 F 7 2 6 1 マドンナの表現:幼児イエスとマリアの部分:幼児イエスがマリアから授乳していないが、マリアは胸を開いている 11 F 7 2 6 9 マドンナの表現:幼児イエスとマリアの部分:幼児イエスがマリアから授乳することを拒む
  • 分類86  GRBG :聖人へ授乳 
  • 分類87  GRBR :煉獄の魂へ授乳:他 
  • 分類88  GRGB :謙譲(地面へ座す) まだ王座有り
  • 分類89  GRGG 謙譲(地面へ座す):王座無し
  • 分類90  GRGR :謙譲(地面へ座す)背景無しか,少ない(楽園像への過度期)
  • 分類91  GRRB マリア田園図鑑 :授乳と謙譲の混合 開けた風景 
    地面に座す聖母子の周囲に具体的な屋外風景が描かれ始める。草原であったり,生涯の出来事の一つである「エジプト避難途上の休息」の場面である。
  • 分類92  GRRG マリア庭園図鑑 :閉じた庭:楽園(地上)
     マリアは開けた風景よりむしろ「閉じた園」,庭園と密接に関係している。閉じた園自体がマリアの処女性の象徴とされる。囲われていることを示す垣根にはバラやその他マリアを象徴する植物が描かれる。庭園の文化史との関連で地域ごとの特色も興味深い。  iconclass分類 1:バラ垣,その他の垣 ショウンガウアー,ロホナーによる2作品が特に有名。 2:田園風景のある聖母子  ジョヴァンニ・ベリーニ作。分類91と違い悲しみの暗示は含まれていない。 3:草原の聖母子  ラファエロ作。彼には類似の構図の作が計3つあり(ウフィツィ蔵,ウィーン蔵,ルーブル蔵)、ルーブルの作は「楽園の女庭師」とも呼ばれる。
  • 分類93  GRRR :マリア天国図鑑:
    地上の楽園とここで述べる天国の庭は厳密には区別できないが,作品の題名としてパラダイスの意味の語が含まれることがある。 iconclass分類   1: 2: 3:熱帯の風景のなかの聖母子   熱帯は天国ではないが,通常の景観と異なるものとして理解されている。
  • 分類94  RBBB :マリア鳥検索図鑑
     鳩は救済の象徴として,また聖霊の花嫁としてのマリア像などに登場。鶸(ひわ)は受難の象徴としてマリアやイエスが持つ。その他伝説の鳥など。 iconclass分類 1:鳩:救済の象徴,聖霊の花嫁 2:鶸(ひわ)のいる聖母子:受難の象徴 デューラー作 3:その他:伝説の鳥,否定的意味 その他,マリアに関係する鳥 オウム カラドリウス カラバス カリスタ カワセミ クジャク グリフィン  スワン(白鳥) ダチョウ 卵( 鳥の)  チャラドリウス 七羽の(聖霊の賜物を象徴)  不死鳥(フェニックス) ペリカン ボノファ めんどり 鷲
  • 分類95  RBBG :マリア哺乳動物検索図鑑 
    iconclass分類 1:小羊,ライオン:ヨハネと関連 2:一角獣(実在しないがマリアの処女性の象徴として頻出する動物) 3:その他 牛,ロバなど 例:猿のいる聖母子,デューラー作 その他マリアに関係する哺乳動物 犬 うさぎ 熊 猿 象 猫 めんどり
  • 分類96  RBBR :マリア動物検索図鑑:その他の動物
    iconclass分類 1:昆虫:テントウ虫,カタツムリ 2:は虫類,否定的:蛇,ハーピー  蛇は人類の原罪をもたらしたものとしてマリアやイエスの足元に踏みつけられて描かれる  ハーピーは伝説の怪物。アンドレア・デル・サルト作。 3:その他:植物との類似など:サンゴ枝(既述) その他マリアに関係する「その他の動物」 貝殻 カタツムリ 亀 魚 蝶 トカゲ 蜜蜂、蜜蜂の巣 龍
  • 分類97  RBGB :マリア樹木検索図鑑
    iconclass分類 1:善悪(知識)の樹,生命の樹  アダムとエヴァのいた楽園にあったとされる「善悪(知識)の樹」はイエスの十字架刑の十字架の材料と対比された。十字架を「生命の樹」として描いた作があり,両脇にマリアとヨハネが描かれている。ボナヴェントラは生命の樹という考えを記した神学者。 2:エッサイの樹,燃える茨(以上 既述),枝   枝(ラテン語でvirga)は処女(virgo)との類似により,またその頂に「花」であるイエスを実らせたものとしてマリアの象徴とされた。 3:レバノン杉 杉の象徴は杉Cedrus exaltada 「杉のように大きく」(シラ書24章13節)に基づく。自分の名への励ましのように思える。聖書の舞台の植物としてはレバノン杉のことである。レバノン杉と糸杉の常緑樹はソロモンの王座(既述)の材料として「イエスの座」であるマリアの象徴とされた。レバノン杉はレバノンの普通切手の図案として長年採用されてきた。クリスマスツリーとして立教大学にあるのはヒマラヤ杉である。その他マリアに関係する植物とその由来(名称は樹木と果実と花にまたがる場合があるのでここにまとめて列挙した)  バラPlanata de rosa「バラの木」(シラ書24章14節)  オリーブの木oliva speciosa(シラ書24章14節) アーモンド, アーモンドの木 イチゴ イチジク オーク アイヒ オウトウの木 オダマキ オリーブ、芳しき オリーブの木 オレンジ 樫 くるみ 月桂樹 穀物の束 ザクロの実 棕櫚 スズラン スミレ 蔦 ナデシコ ハス ヒエンソウ 松ぼっくり 麦穂 洋ナシ(果実) 
  • 分類98 RBGG :マリア果実検索図鑑 
     植物の一部である果実もマリアの象徴に多くを提供している。エヴァがアダムに渡した禁断の果実はリンゴともイチジクともいわれる。またぶどうは受難の象徴として多く描かれる。 iconclass分類 1:リンゴ,イチジク 2:ぶどう 3:他の分類との類似:帝国宝珠:リンゴに似る,上に十字架など付く(既述)
  • 分類99  RBGR :マリア花検索図鑑 
    バラはマリアその人の象徴としても,またロザリオの原型(バラ輪)としてもマリアに関係深い。ユリは受胎告知の天使ガブリエルがマリアに届ける花として登場する。(図示済み)もともと天使は神の権威の象徴である錫杖を持っていたからそれとの形態の類似は理解しやすい。白百合は学校法人の名称にもなっている。東京の九段の本校の他に湘南,仙台,函館などに姉妹校がある。  その他 多数の花の集合として花輪がある。フランドルでは聖母子像の周囲に別の画家が描いた花輪を合成する作品が多く作られた。専門に分化していたわけである。たとえばルーベンスとセーゲルスの組み合わせが有名である。 iconclass分類 1:バラ:花輪としてロザリオ,王冠に似る 2:ユリ:様式化され錫杖に似る ユリ(百合) Sicit lilium  inter spinas「茨の中に咲きいでたゆりの花」(雅歌2章2節) 3:花輪,その他
  • 分類100  RBRB :非生物で人工物:マリア人工物検索図鑑 
     生物に続く非生物はまず人工物から紹介する。聖母子像に多く登場するものとして十字架と本(巻物)がありいずれもキリスト教の教義,本質を象徴する。十字架は樹に似ること,冠は花輪に似ることから植物の隣に分類した。 iconclass分類 11 F 1 2 マリアのモノグラム 11 F 1 3 マリアの紋章 11 F 3 6 マリア(幼児イエス無し)、他の人物伴う:勝利のマリア、凱旋車に乗る 1:十字架:樹に似る 冠:花輪に似る 2:本,巻物など  汚れの無い鏡Speculum sine macula(外典「ソロモンの知恵」7章26節) 3:建造物:塔,井戸,都市など  ダビデの塔 Turris David(雅歌4章4節)  命の水を汲むところ,泉(井戸)Futeus aquarum viventium(雅歌4章15節) 泉(井戸)は人工物か否か両方にまたがるところもある。地下から溢れる水が泉でそれをくみ出す機構が井戸であるから,井戸は泉の先端部,蓋といえるからである。101ページで図示。  閉ざされた園Hortus  conclusus(雅歌4章12節) 庭は自然に囲い,人手を加えた人工物とみなせる。「閉じた」という意味が処女性に通じ,マリアの象徴である。  園の泉Fons hortorum(雅歌4章15節) 泉は非人工物であるが園の中にあることは「封じられた(封印をつけられた),閉じた」泉として人手が加わっていることを意味する。「閉じた」からマリアの処女性の象徴である。 その他の人工物 アーロンの花咲く杖 石の門 糸巻き棒 インク壷 器 容器 王冠 王錫 鏡 楽器 花瓶 ガラス(容器) ギデオンの羊毛 球 鎖 契約の櫃 剣 香炉 杯 12の星の冠 勝利の旗 燭台、七脚の 城 象牙の塔 槌、ハンマー 都市 閉じた門 ニンブス 柱 武器 船 ペン、筆 指輪 ろうそく
  • 分類101  RBRG :非人工物:地球とその構成物,産物 
    人工物に続いては天然の様々な事物をまず地球から,次にその他の天体を紹介する。 iconclass分類 1:地球,大陸(5大陸を象徴するロザリオの色は既述),洞窟,泉  命の水を汲むところ,泉(井戸)Futeus aquarum viventium(雅歌4章15節) 泉(井戸)は人工物か否か両方にまたがるところもある。地下から溢れる水が泉でそれをくみ出す機構が井戸であるから,井戸は泉の先端部,蓋といえるからである。また地上と地下の境界でもある。  ルルドはマリアが1858年に出現したとされる地である。出現以前は洞窟と泉だけであった。マリア出現の後はそこにマリア像や祭殿が設けられ,泉から奇跡の水をくみ出すための井戸がある。このルルドの景観を模した構築物は世界中にある。東京 関口のマリアカテドラルや各地の教会,学校などである。  また泉の上に聖母子像を描いた「命の泉」という図像がビザンティン文化圏にある。  園の泉Fons hortorum(雅歌4章15節)  泉は非人工物であるが園の中にあることは「封じられた(封印をつけられた),閉じた」泉として人手が加わっていることを意味する。「閉じた」からマリアの処女性の象徴である。 2:地下,鉱物,宝石,貴石,石,岩 特に宝石がマリアの高貴さの象徴となった。 3:海中 真珠 錨 「海の星」は天体の項で紹介する。 その他 地球の構成物 石 岩 海 海の没薬 貴石 鉱物 サファイア 真珠 ズードコス・ペゲー(命の泉)  セレニト(マリアガラス) ダイアモンド 大理石 宝石 宝石、準 (貴石)
  • 分類102 RBRR :マリア天体,気象,自然現象検索図鑑 
    地球以外の天体を分類する。 12の星の冠は黙示録の女に由来しマリア像に含まれた(既述)。6つの頂点を持つ星自体もマリアの象徴とされる。マリアの服飾には星が描かれることも多い。  海の星Stella maris (ヴェナンティウス・フォルチュナートゥス(530~610年頃)がマリアにつけた尊称),航海者を安全に導く星としてマリアはその守護聖人とされた。  また暁星,明星は「太陽」であるキリスト,日の出を予告するように明け方に現れる星(金星)であるからマリアの象徴とされる。フランスの男子修道会,マリア会が日本に設立した学校の名称になっている。(札幌光星学園,東京暁星学園,大阪明星学園,長崎海星学園)  太陽,月もマリアの象徴とされる(既述)。彗星,隕石もマリアの象徴だが,隕石は天からの落下物として気象にも分類した。  三日月 Electa ut sol 「太陽のように輝き」(雅歌6章10節),  半月  太陽 Pulchra ut luna 「満月のように美しく」(雅歌6章10節)  天の門 Porta Caeli(創世記28章17節)  神の都Civitas Dei(詩篇87編3節)   都市であれば人工物であるが,神により作られた都であれば天国,天上のエルサレムという意味で「非人工物」と言えよう。   2:天と地を繋ぐもの:虹,ヤコブの梯子(人工物) 3:気象,自然現象:火,光,落下物(隕石) その他の天体,気象,自然現象: 雲,雪,光  「雪のマリア」はローマのサンタ・マリア・マジョーレ教会の創設に関する伝承で真夏に降った雪に因むマリア像の名称でもある。
  • 分類103  RGBB :イエス服飾首から上:乳児服飾(産着)図鑑
  • 分類104 RGBG :イエス服飾体幹 乳児服飾(産着)図鑑
  • 分類105  RGBR :イエス服飾下半身,全身 乳児服飾(産着)図鑑
  • 分類106:  RGGB :イエス本人首から上
    iconclass分類 11 F 7 1 2 マドンナの表現:幼児イエスの部分:幼児イエスが画面の外を見る 11 F 7 1 3 マドンナの表現:幼児イエスの部分:幼児イエスが聖人や寄進者の方を見る
  • 分類107:81区分 RGGG :イエス本人 体幹 
    iconclass分類 11 F 7 1 1 マドンナの表現:幼児イエスの部分:幼児イエスが話したり祝福する仕草 11 F 7 1 5 マドンナの表現:幼児イエスの部分:幼児イエスが手に何か持つ 11 F 7 1 5 1 マドンナの表現:幼児イエスの部分:幼児イエスが何かを誰かに手渡す 11 F 7 1 5 2 マドンナの表現:幼児イエスの部分:幼児イエスが何かを受け取る、または何かに手を伸ばす
  • 分類108:  RGGR :イエス本人 下半身,全身 
    iconclass分類 11 F 4 6 マドンナ(幼児イエスを伴う):幼児イエスは彼女の肩に座る 11 F 4 6 1 マドンナ(幼児イエスを伴う):幼児イエスは彼女の肩に座る:マリアは立つ 11 F 4 6 2 マドンナ(幼児イエスを伴う):幼児イエスは彼女の肩に座る:マリアは座るか、王座に座す 11 F 4 6 3 マドンナ(幼児イエスを伴う):幼児イエスは彼女の肩に座る:マリアは地面に座す 11 F 4 6 4 マドンナ(幼児イエスを伴う):幼児イエスは彼女の肩に座る:マリアはひざまづく 11 F 7 1 4 マドンナの表現:幼児イエスの部分:幼児イエスが眠る 11 F 7 1 6 マドンナの表現:幼児イエスの部分:幼児イエスが食べている 11 F 7 1 7 マドンナの表現:幼児イエスの部分:幼児イエスが遊んでいる
  • 分類109:  RGRB :イエスとマリアの関係:首から上 
    iconclass分類 11 F 7 2 1 特定の部分:マドンナの表現:幼児イエスとマリアの部分:幼児イエスがマリアを見る、またはマリアの方を振り返る
  • 分類110:  RGRG :イエスとマリアの関係:体幹(手の動き)
    conclass分類 11 F 7 2 2 マドンナの表現:幼児イエスとマリアの部分:幼児イエスがマリアの方に手を伸ばす、マリアに何かを示す 11 F 7 2 3 マドンナの表現:幼児イエスとマリアの部分:幼児イエスがマリアのヴェールを引き上げる、マリアの服に触れる、マリアの胸に手を置く 11 F 7 2 4 マドンナの表現:幼児イエスとマリアの部分:幼児イエスがマリアの首に腕を巻き付ける 11 F 7 2 5 マドンナの表現:幼児イエスとマリアの部分:幼児イエスがマリアの頬に頬寄せる、マリアに接吻する 11 F 7 2 7 マドンナの表現:幼児イエスとマリアの部分:マリアがインク壷を持ち、幼児イエスは書く 11 F 7 2 8 マドンナの表現:幼児イエスとマリアの部分:幼児イエスはマリアに冠をかぶせる
  • 分類111:  RGRR :イエスとマリアの関係:下半身,全身 
    iconclass分類 11 F 4 1 1 マドンナ:マリアは立つか半身、幼児イエスはマリアの前に、胸の近くに 11 F 4 1 2 マドンナ:マリアは立つか半身、幼児イエスはマリアの腕に(マリアの左側に) 11 F 4 1 3 マドンナ:マリアは立つか半身、特別の型 11 F 4 2 1 マドンナ:マリアは座るか王座に座す、幼児イエスは彼女の前、膝の上(または彼女の胸の前に) 11 F 4 2 2 マドンナ:マリアは座るか王座に座す、幼児イエスは彼女の膝の上(マリアの左側に) 11 F 4 2 3 マドンナ:マリアは座るか王座に座す、特別の型(他の人物はいない) 11 F 4 4 1 マドンナ:マリア(立つ)、幼児イエスはマリアの前(ひとり立つ、または彼女に寄りかかる) 11 F 4 4 2 マドンナ:マリア(立つ)、幼児イエスはマリアの横(ひとり立つ、または彼女に寄りかかる) 11 F 4 5 1 マドンナ:マリアはひざまづく(地面に)、幼児イエスは彼女の前に立つ 11 F 4 5 2 マドンナ:マリアはひざまづく(地面に)、幼児イエスは彼女の前に座る 11 F 4 5 3 マドンナ:マリアはひざまづく(地面に)、幼児イエスは彼女の前で横になる 11 F 4 5 4 マドンナ:マリアはひざまづく(地面に)、幼児イエスは彼女の前でひざまづく
  • 分類112:8  RRRB :マリア服飾図鑑:首から上 
  • 分類113:  RRBG :マリア服飾図鑑:体幹 
  • 分類114:  RRBR :マリア服飾図鑑:下半身,全身,その他 
  • 分類115 RRGB :マリア本人:首より上 
  • 分類116 RRGG :マリア本人:体幹
  • 分類117 RRGR :マリア本人:下半身,全身
  • 分類118 RRRB :マリア像の位置:室内
    マリア像がどこにあるか,位置,場所,文脈によってマリア像の意味は変化する。文脈(コンテクスト)とは単独作品ではなく連作のなかのマリア像などの場合で、どの部分に描かれているかによって図像の解釈が違うことなどです。ロザリオの連作は分類60で紹介していますが,ビザンティン、東方正教会には「アカシスト讃歌」という連作があり、受胎告知の祝日に向けてのもので、西欧のマリア讃歌の成立にも大きな影響を与えました。またイタリアのマリア巡礼地に因んだ名称「ロレトの連祷」はマリアの名称、象徴を50以上挙げ、単独像としても連作としても大変豊富な内容です。同じ「受胎告知」の図像でもロザリオの連作の一部であるか、アカシスト讃歌の一部であるかにより細部の解釈に違いが生じる、といったことです。
  • 分類119 RRRB :マリア像の位置:屋内だが室外:建築表面
    この中間の分類は建築で外部に向いた部分の図像などで、室内の図像とも完全に屋外の図像とも違う性格がある。室外の第一段階として部屋の扉など室外だが屋内にある図像、ついで建築表面を小規模あるいは部分,と大規模あるいは全体に分類、小規模は教会の鐘などのマリア像です。大規模は大聖堂正面などいわば建築の「顔」にあたる部分や,建築も複数含み敷地全体を個体として総称する「マリア教会」などである。
  • 分類120 RRRR :マリア像の位置:屋外、その他
    屋外に出たマリア像は様々に変形,複製されながら私たちの心に到達し,お気に入りのイメージを形成する。分類は墓地の墓碑銘,道標,十字架の道行きなど「屋外連作」がある。次いで,教会,巡礼地(固定)などから移動し,たとえば祝日の行列で運ばれるマリア像や,現代では展覧会などでオリジナルや複製が展示,流通されるマリア像という分類がある。複製芸術の代表は郵便切手や通貨など小規模芸術が多い。そして各人の心の内なるイメージとして「美し,センチメンタル」などの形容詞句とともに様々な色,顔で記憶されるマリア像がある。本ブログのメインイメージの切手は3種の原作と3原色を組み合わせた一例で、3*3の9通りの色と形の組み合わせがある。青は「信仰,祈る」マリア像に,緑は「希望,王座(田園のなか)の」マリア像に,赤は「情愛,様々な細部を持った」マリア像のイメージとしたのが私 小杉健の考えで各人各様の組み合わせ、イメージがある。