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2007年3月21日 (水)

受胎告知

受胎告知の図像学の日本語文献としてはボッティチェリ研究で有名な矢代幸雄氏の

「受胎告知」(新潮社)があり、英語ではシラーの英訳、

「キリスト教美術の図像学」 1巻、33-54ページ、 図66-129があります。

 今、レオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」展が開催されており、

シラーの図120はこの絵なのですが本文には言及がありません。

ちなみにその前後の文では「寝室、寝台の意味」「天使が持ってきた、

勅書(手紙より公式的という含意)に三重や一重の印章がついている作例」

「花や植物の意味」を解説しています。

 シラーでは続いて、中世の受胎告知の最後を飾る作例として、

ドイツの二つ、

 グリューネヴァルトの「イーゼンハイム祭壇画」内の図像と、

 浮彫彫刻;ファイト・シュトースのニュルンベルクのザンクト・

ローレンツ教会にある、を挙げています。

 ドイツ圏の彫刻についてはチャペル・ニュースの第16回で

採りあげ、14回目の「イタリア・盛期ルネサンス」でラファエロらの絵画、

15回目の「無原罪の御宿り像」ではスペインのムリリョらと並べ、

当時を代表する三つの主流とみなしました。

 色で三区分するとどうなるか考察中です。

シラーは最後にティントレットやイグナス・ギュンター、レンブラントの

作例を挙げています。

2007年3月17日 (土)

守護するマリア、その3:「守護のマント、やロザリオ以外、」のマリア像

 図像学的分類のうち、疑問が残る「守護する」マリア像の第三区分について

述べていきます。

 まず「メルセデ修道会」のマリア、という名の図像と、

 「トリニタリア(トリニダード、三位一体の意味)修道会」のマリア、

 「援助(Soccoro)」のマリア(「ミゼリコルディア(守護のマント)」のマリア、の

一変種)、だが「棒」を持って悪魔(足元に描かれることが多い)を攻撃する

マリアを描き、好戦的な印象、また創世記に登場する「蛇」を踏みつける

「黙示録の女」としてのマリア、とも類似する。何となれば蛇も悪魔も

ときに同じような怪物状に描かれ、蛇を攻撃するマリアも武器を持つことが

多いから。

 そして「守護のマリア」の一部として「女羊飼いマリア」の図像がある。

羊を守護する「女羊飼い」としてのマリアを描く。

 そして「光、ろうそく」のマリア、という「守護」の一変種もあり、頭部の

「光背」を強調したり、両手から光線のようなものを発している図像がある。

 さらに、「デザンパラドス(見捨てられた者)のマリア」(スペイン特有)や

「勝利のマリア(勝利を象徴する「棕櫚」を持ち(棒に似ているが)、悪魔を

踏みつける、やはり好戦的な図像、

「摂理のマリア」「善き休息のマリア」という、眠るイエスを抱くマリア像がある。

 以上が様々な図像を含む、「守護のマリア」の第三(その他)グループである。

 

 これらが「守護するマリア」の第三(その他)のグループである。

マグダラのマリアの図像学

 マリア(イエスの母)に近しい人(男性)として3人を挙げましたが、女性から

3人挙げるとしたら、いろいろ解答はあると思いますが、

母アンナ、(キリスト教神学的に対比されるという意味で)エバ(人類の祖とされる)、

そして「マグダラの」マリア、というのも一候補でしょう。

 ただし、「マグダラの」マリアは、マリア(イエスの母)と混同されることに

おいて、一番「近しい(似ている)」と言えるかもしれません。

 イエスの十字架刑の群像で、十字架の下で悲しむ人々の中に二人が

含まれることがあり、たいてい何らかの手がかりから二人は区別され

ますが、展覧会カタログなどで「間違った方の」マリアに同定されること

もあるようです(先述した「1300-1800年のマリア像」(1987年、ドイツの

ケヴェラーで開催)に一例)。またもっと深い意味で、たとえば有名な

ミケランジェロの「ピエタ」(ヴァティカン)の「女性」は若く、美しすぎるから

「マグダラの」マリア(を描こうとしたの)ではないか、とする弓削 氏の

発表など、既定観念を揺さぶるような類似もあります。

 複数の人物からなる彫刻などで、その一体しか残らなかった場合など、

本当は確信をもって区別できないのかもしれません。

 今回は「赤」の切手を冒頭に掲げるべきだったかもしれませんが、

両マリアの「混同」の可能性を述べているのであえて「色」は特定しませんでした。

2007年3月15日 (木)

イタリアとドイツのマリア:フランスを介して

Photo_6  毎回の記事に赤青緑のいずれかのマリア像を表示して記事への

導入にしたいと思います。

 このマリア像(ラファエロ)は作者はイタリア、現在の所在地はドイツ、

(ドレスデン、もしドイツ年かイタリア年で来日すれば私にとっては

ミロのヴィーナス、モナリザを超える至宝と思えます)、

そしてロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」で

グラティアという女性(アヴェ・マリア、グラティア・プレナ、、、とも連なる)

においてドイツ的、フランス的、イタリア的三者が理想的融合を遂げた

ように、フランス的要素を見つければ三題噺が完成します。

ラファエロの生涯のなかでフランソア1世に仕えた時期があり、

その名がついた聖母子像は確か青いマントが印象的な作品でした。

フランスが青、イタリア、ドイツに残りのどちらかの色を、となると

情熱のイタリアに赤、冷静なドイツに緑でしょうか。もっとも

イタリアもサッカーは青で競争したらどっちが獲得するか

微妙なところです。ドイツはシュバルト(森)深いイメージが

ありますから緑への連想は堅いところでサッカーチームも

緑のユニフォームのことがありました。

 サッカーへの言及に唐突の感をお持ちかもしれませんが、

国民性の研究でキリスト教分派との対応づけを聞いた記憶が

あります。次回は赤か、青、どちらかではじめたいと思います。

2007年3月14日 (水)

ヨハネの図像学

マリアと縁の深いヨハネは二人いて、その祝日が同一など少なからぬ因縁が

ありますが、同じようによく似たふたつでマリアに密接する植物に杉:

レバノン杉と糸杉があります。

 図像における区別や混同など興味深い点も多く、さらに別のマリア象徴:

園や泉、井戸などを配すると(実在しないが、図像学を説明する上では

好都合な)「独特なマリアの園」ができそうです。これはアンドレ・マルローの

「空想美術館」に倣えば「空想図像学」ともいえそうです。

 話が脱線しそうですが、ダヴィンチの謎めいた「ヨハネ」などの例も

ある通り、マリアとヨハネの「顔」の類似などを追及すれば

「キリストの愛した母(弟子)」の共通項もみえるでしょう。

 マリアの象徴やアトリビュートが一同に会した図像は中世に多くみられ、

その過多のうち、足元の月や雲のみが残ったのが有名なムリリョらの

「無原罪の御宿り像」です。21世紀の新たなマリア像を模索するとしたら、

こうした新たな純化にヒントがあるかもしれません。

 以上はとりとめのないおしゃべりでしたが、~~の図像学、として

マリアを巡る人、ものの紹介は続けたいと思います。

イエスの図像学

マリアを巡る人物の図像学としては、イエス・キリスト、両ヨハネ(洗礼者ヨハネはその

幼児期にマリアと共にあり、福音書記者ヨハネはマリアの晩年にマリアと共にあった)

が三大図像学といえるでしょう。

 女性像としてはよく比較されるのはマグダラのマリア、エバ(アダムとエバのエバ)ら

でしょうが、ここではあえて擬人像である「カリタス(愛、三神徳のひとつ)」

その授乳する姿は授乳のマリアを彷彿とさせる、を挙げます。

 まず、イエス・キリストについてですが、チャペル・ニュースの

61回に及ぶ「イエス像の変遷」があります(1974年12月から

1981年2月)。そのすべてがマリアに関するわけ

ではありませんが、たとえば(13)では東方キリスト教界のイコンとして

聖母子像を2つ図示しています。

 ヨハネについて、福音書記者ヨハネについては三浦アンナ著

「藝術におけるヨハネ」(岩波書店)がありますが、

洗礼者ヨハネについては日本語でまとまった文献はないようです。

マリアと幼児イエスを論じる際に登場するだけでなく、成人としても

群像があり順次採りあげたいと思います。何となればその祝日が

8月29日と個人的に関係ある日でもありますので。

2007年3月11日 (日)

マリア検索図鑑 あ の部 の課題

1990年までの執筆済み分に未見、または記述が不足と考える、

「マリア検索図鑑」の項目を50音順にリスト、コメントしていきます。

 「アプシス」ではビザンティンの記述はありますが、そのイタリアへの

伝播の過程として、イタリア、シシリアの二作例、

チェファルのドームの作例(1148年頃)、

モンレアーレの作例(12世紀後半)をリストします( ML1、208 )

「アルブレヒト祭壇画」はその一例のみを、服飾、ファッションとの関連で

述べましたが、

「中世のマリア論の集大成」という意味で図版、記述が多く必要です

(~~の女王、という様々な図像タイプで、マリア像を囲む聖人群の

階層の分類に役立つ)  ML1、90や Aurenhammer 展覧会カタログ、など

 他文化の受容、継承を論じる概念としてAkkomodation ML1、69は

ギリシア神話の女神の神殿がマリアの教会に変えられたり、

樹、石、水源(泉など)という三大要素のいずれかがある地母神の聖地が

マリア巡礼地に変えられたり、ラテンアメリカでインディオの地母神信仰が

マリア信仰に置換されたり、といった例があります。

 ( あ の項目 続く )

2007年3月10日 (土)

マリアの展覧会:ロシア皇帝の至宝展

この3月から開催予定の標記展覧会について、展覧会史からと、マリアの図像学から

コメントいたします。

 イコンというジャンルの浸透について、1967年は以下のような状況でした

  (「図像学よりみたイコノクラスムの神学論争」 「歴史教育」 19-24p)

「1964年4月、東京国立博物館にて「ロシア秘宝展」が開かれ、ロシアの

イコン19点が展示された。残念ながら余り注目するところとならなかった

が、今年(1967)3月、同館にて「ユーゴスラビア・イコン展」が開かれた

ときは(40点)、多くの人の注目するところとなり、イコンの名称もやや

一般化したようである」

  この前後日本で展示されたイコンのマリア像は「東海大学紀要:マリアの図像学(2)、

日本の展覧会(1954-1987)で展示されたマリア像」にあるごとくですが、現状と比べ、隔世の感があります。

 マリアの展覧会でイコンを含むものとしては下記の2000年から2001年にアテネの

ベナキ美術館で開催の「神の母(マリア):ビザンティン美術におけるマリアの造形表現」

があります(カタログ、532ページ)。記事では特に「神の母(マリア)の奇蹟をもたらす

イコン」(47-57ページ)が」注目です。マリアのイコンの集大成本が進行中との記述が

あり、1500以上の記事(これだけの数の、「奇蹟的とのいわれを持つ」マリア像が、東方キリスト教世界、ここではビザンティン帝国の歴史上の領土内、ロシアや東欧の正教会の国々、バルカンとコーカサス地方、キリスト教東方の国々(コプトのエジプトやエチオピアを指すと思われる)にあるということです。

2007年3月 8日 (木)

原色美女図鑑

いわずと知れた、週刊文春のグラビア連載で、総集編の回をスクラップしている

人も多いと思います。マリアを「美女」と称するのが適当かわかりませんが、

少なくとも「現実の」女性美に対して、過去2000年の「女性美」の一翼を担う

ことは確かです。その際も慎み深いその「美」は原色というより

セピア、モノクロの世界がふさわしいかもしれません。実際、マリア彫像の

白黒写真を見て実物はさらに美しいと思っていると、カラー図版に出会った

時、そのどぎつさ、色の落ち、剥げ(絵画と違い、原型の保存はほぼ不可能

でしょう)に落胆することが多々あります。

 図像学的観察にはむしろ白黒、スケッチ(線描)が適していることも

あるようです。なおマリアについて、その顔、ディティールを集めた

「原色美女図鑑」に近いカラーページがウンベルト・エーコ

の訳書「美の歴史」に載っており、同種の自分なりの選択をしたい

という欲求を起こさせてくれます。

この図鑑がすごい

ジャンルの紹介本で「このミステリがすごい」に始まり、SF,

文庫、新書、辞書・図鑑、とあるのに

「この図鑑がすごい」という、図鑑ジャンルの紹介本は見かけません。

図鑑ジャンルそのものが好きという人はいるはずですし、

日本の既刊本を追うだけでなく、海外の大作(とんでもない大物が

多々あります)を紹介してもし翻訳にでも結びつけば有益なサイト、

ブログになると考えます。

 それで「マリアの図像学」の一部を借りて

  (「図鑑」もIconographiaです)

マリア関連の図鑑(あるいはその類似ジャンル)を

紹介していく予定です。

マリア像100選:二つの試み

二つの試みはともに4枚の図版で1ページ(1回)を構成するという形です。

このブログでは三区分を提唱していますのでその提示もあわせ試行します。

( トレンス を改変) 左がチャペルニュース連載、東海大学紀要、キリスト教史学会紀要の論文、右がドイツのマリア・ハンドブック、 Handbuch der Marienkunde,

1984. Verlag Friedlich Putset. Regensburg. (以下 HMKと略)

の二つの図版部分です。

                           HMK 874-883

   東海大学紀要(3)              「マリア崇敬像の形態学 

   119-117 ページ 形態の分類は       ( Typologie  )」の章への図版です

   右の章によります                  この語は「予型論」の意味も

  西欧のマリア崇敬像の源泉は          ありますがここでは図像学に

  ビザンティンのマリア像である           近い意味で用いています  

  ( チャペル (1)から(6) 

 { 下記のほか祈るマリア(オランス)もあり }

  ホディギトリア型(御子を左に抱く図像、右に抱く

  のもその変形) と

  エレウーサ型(より親密、御子と頬を寄せ合う)

  そして「王座のマリア」という正面向きの図像

  タイプである

  (あまり長いと引用を超えますので、、 以下 次回)

2007年3月 7日 (水)

マリア像100選の試み

マリア像から100選(10でも20でも同じですが)、という試みは

図像学的には傑作主義でなく、代表的な図像タイプをまんべんなく

網羅する、という方法があります。

 ドイツのHandbuch der Marienkundeという「マリア・ハンドブック」は

美術と崇敬像の2章で64枚と36枚、計100枚の図版を示しており、

はからずも100選となっています。

 チャペルニュース連載の「マリア像の分類、変遷」では

時代順の記述が約25回で一巡し、一回約4枚、ほぼ100枚の

図版を示しています。

 世界中のマリア像を検索する図鑑、という試みの叩き台として

これらの100選(他にも~選を用意します)を紹介していきたいと

思います。

マリアの図像学:信仰、希望、愛と受胎告知、降誕

信仰、希望、愛はキリスト教において神に向き合う際の、三つの徳とされています。

これをマリア図像学での三区分に適用してみます。

(典拠はありませんが、現代にマッチしていると考えます)

 既述の通り、「希望(懐妊)のマリア」という図像があり、

時間的にこの図像の以前、以後を画す出来事は

受胎告知(以後、胎内に御子を宿したことが明らかとなる)と

降誕(御子が誕生し、懐妊の状態は終わる)となります。

生涯の図像、説話的図像においてはマリアがどういう

背景の中に置かれているかは自明なことが多いのですが、

単独像になると、どの時期のマリアを描いたかが判断しにくい

こともあります。

マリアの顔:図像学における名前との関係

顔と名前が一致しない、というのは日常よく経験するところですが、

図像学において「顔」はどのように位置づけられているのでしょうか。

東方教会における聖画像である「イコン」の描き方を規定する

「アトスの画法書」や、カトリックにおいて「無原罪の御宿り」をどのように

描くかを示す、スペインのパチェコによる規定などはありますが、

顔のディティールは各画家の相違工夫によるところが大です。

また名前との関係ですが、斯く斯くしかじかの特徴のある顔の

マリア像はこう呼ばれる、といった確実な対応は未見です。

黒い、といった形容や、涙を流す、といった具体的状態のマリア像でも

「黒い」「涙の」と呼ばれるとは限りません。

 ただ現在技術の進歩や「顔」をめぐる学際的アプローチなどにより、

仏像などと同じように「マリアの顔」についても新知見が可能でしょう。

「情愛の聖母子像」についての大学紀要では表情、顔の各器官については

述べましたがまだ全体への接近はできていません。

 日本において「顔学会」という新しい研究分野も生まれ、マリアの

検索図鑑の試作でも顔、をどう扱うか、は大きなテーマです。

 お札、切手に肖像が多用されるのも印象に残りやすく、少しの違いでも

違和感が生じるから偽造防止に役立つ、とききます。

 マリア像、といった時もその「顔」を想起していることは多々あるでしょう。

2007年3月 6日 (火)

マリアの名前

マリアの名前:  東海大学文学部紀要 掲載 「マリアの図像学」(3)より要約、

  適宜、三区分を適用し、検索図鑑とする方法論の試案とした。

語源、語義、 説は60以上あるが、「海」に関する語義がいくつかあることに注目したい

  ( 苦い海、海の滴、海の星、海の没薬) 

    これは陸、海、空 の三区分 の一部とできよう  

     ( 「ポルトガルのマリア」という1000ページを超える大著では  

         これに「天」を加え、四域におけるマリア、という章を設けている)

 名称の分類:  

   Lexikon  der Marienkunde  という、 Marienlexikon の先駆となるマリア百科が

あり、( A - Elithabeth の1巻で 中断) その Ehrentitel (尊称)にもとづき、

他の名称を加えた。

 「無原罪の御宿り」   ルルドのマリア像で有名

 「無原罪の(聖なる)(マリアの)御心」

 マリアの徳を称える名称:  たとえば  「謙譲」  (美術史上の命名?)

 奇蹟の: 

 上智の座:

 敵に対する力、闘争などを示す名称

  平和主義者であるが ときに戦いに荷担することもあるという側面を示す。

  城壁、山、壁、城 など  おや と思うような名称もここに分類されている

 (検討の余地?)

 勝利の:  有名なのは  レパントの海戦でのトルコへの勝利

     ビザンティンの図像像タイプ:「ニコポイア」は「勝利をもたらす者」の意味 

 ( 続く )

  

トリュモー(扉口の中央基柱)の聖母子像

チャペル・ニュース連載(7)への索引を続けます。

 トリュモーの聖母子像 :

  壁面(「尊厳の(王座の)聖母子像」が多い)から解放された三次元の彫像で

マリアと御子もより自由な姿で描かれていく。

  最近の文献ではMarienlexikon 3, 536-537p に

 同項目がある(ただし、「大聖堂彫刻」の一項目として)

  作例はパリのノートルダム大聖堂から二つ、

   アミアンの大聖堂から二つ挙げ、

  ドイツからもフライブルグ・イン・ブレイスガウの作例を挙げ

  ストラスブールの(図像タイプは尊厳の「ソロモンの王座」だが)

  作例にも劣らない、精妙な彫刻と述べた。

   スペインでも13世紀末、レオン大聖堂の通称

  「白いマリア」像もこのタイプ。実はこの作例、

  「御子がマリアの顎を撫でる」の代表としても

   学会紀要で図示し、「白いマリア」という色に因んだ

  名称の説明にも使える、1つ3役も果たす優れものである。

マリア検索図鑑:検索表試案

図像学的索引ともなる、マリア検索図鑑の検索表の試案です。

作例について以下の事項を必要に応じて記述する:

 図像名、製作時期、製作地(所在地)、製作者、製作材質・媒体(小芸術から建築構造まで) 、製作理由(戦勝記念、教会への奉納など)、製作過程(エピソードあれば)、図像学的ディティールの説明 (主要テーマとは必ずしも峻別はできない)

  主要図像名、と 図像学的ディティール の間 に美術史的事項:5W1Hを記述し、 各々を三区分の繰り返しで分類していくことになる。

ストラスブールを地理的に分類すると、パリ、プラハの中間という分類軸が考えられる

(地球街角ガイド8、フランス、 同朋舎出版)

 マリア像からみれば、パリ(と近郊アミアン)は「美しの神」(キリスト像)」

「黄金の聖母子像」(情愛を主とする聖母子像の代表作例)を有し、

プラハは独特な「ボヘミアの聖母子像」圏である、「美しのマリア像」圏でもある。

女性美の典型としてのマリアという考察をこの地理的関係をヒントに可能であろう。

 またストラスブールはドイツ領とフランス領を行き来した地域にあり、

ドイツ、フランス、その中間という座標軸からは

ケルン大聖堂やアミアン大聖堂などとの模範、様式伝播関係が考えられる。

ソロモンの王座:図像学的ディティール

ストラスブールの作例にある、「ソロモンの王座」像の図像学的ディティールを

検索のために分類します。

 ソロモン:旧約でキリストを予型する人物、王

 ライオン:12頭いるのはソロモンとの関連ではユダの12部族を象徴、

  キリストとの関連では12使徒を象徴、

この作例では聖母子像としての「ソロモンの王座」だけでなく、

本家ソロモン自身も下部で王座に座っているのが刻まれている。

建築構造ならではの、広い意味での「群像」といえよう。

 他の作例では12頭のライオンを区別したり

(両ヨハネの象徴となり、実際は13頭いたりする)、

聖霊の7つの賜物の象徴として鳩が描かれたりする。

 このように主題と、周囲の図像学的ディティールを抽出し、

三区分することで、マリアを描く作例から、

マリア検索図鑑を構築することが可能と考える。

マリア検索図鑑:ストラスブール他

マリア検索図鑑:ストラスブール他

  チャペルニュース連載(7)を材料にした、検索図鑑の試みです。

作例:「ソロモンの王座」、1280年頃、ストラスブール大聖堂、西正面 天蓋部

検索(三区分による)

 主題の図像学的分類(トレンス改変): 

  祈る/王座/ディティール/ のうちの  王座、

   王座の三区分(尊厳/謙譲授乳/開く黒い) の第一グループ、

 尊厳(マエスタ像)の三区分(随伴者たち/その特殊例として「ソロモンの王座」/ 

   その他)の第二グループ、で分類は三段階で完了、

 なおその他には三重冠を被るマリア、や聖職者としてのマリア、がある。

 尊厳(王座に座す)というより、聖←→俗、尊厳←→謙譲、との対応かも

しれない。次回は「ソロモンの王座」の図像学的ディティール

(作例によって異なる)を分類、検索する。

2007年3月 5日 (月)

マリアの図鑑:チャペルニュース(7)索引での試み

マリア検索図鑑を赤青緑の三区分で試作する素材に

立教学院チャペルニュースに掲載された「マリア像の分類(7)」を選びました。

この回では西欧初期中世からゴシック初期までの西欧のマリア像を駆け足で

紹介しています。

 索引ですから、本文で殆ど記載していない作例も検索対象です。

図像名  検索キー  ( 図像学的、 その他 歴史的 5W1H いつどこで、、、、

アイルランド、「ケルズの書の聖母子像」 、 800年頃、

  孤高の地位を占めるかのような独特な図像で西欧の伝統に連なるとは

 解しにくい。

   図像: 王座に座す、 まわりに賛美する四人の天使、

    トレンスの区分では 王座に座すマリア: まわりに天使、に分類される。

    いつ、 800年頃はちょうど端境期、

    どこ、 アイルランドは西欧の西端あたり、

 丸彫像:

   「エッセンの聖母子像」  10世紀、 ドイツ

   「イマードの聖母子像」  11世紀  ドイツ

   大型のマリア彫像としては最古のものと考えられる

 (有名なフランス、 クレルモン・フェランの彫像はスケッチが残るのみ

    図像;王座に座すマリア、御子イエスは正面向きでなくプロフィール

フランスの教会建築: 「マリアの扉口」のアプシス、 「王座に座すマリア像」の最古が

  1150年頃、シャルトル大聖堂、西正面右側のタンパン(半円形の小壁部)

   両側の二天使は香炉を持ち聖母子に敬意を表している

  次回は ストラスブールにある「ソロモンの王座」という図像タイプを代表する、

素晴らしく精妙な作例を検索対象にしたい。

   

マリアの図鑑

何をもって図鑑とするか、ここではVIPという三区分から考えてみたい。

 図書分類では図鑑は辞書・事典、と 絵本、画集 の 間の存在であり、

  (図書分類コードの 5 6 7)

 また それぞれの英文字が

    vocaburary    (辞書というより 語彙、ボキャブラリー)  文字の総体

        icon(ogaraphy)   アイコン、イコン (絵文字) も 文字 と 絵 の中間

        picture book      絵の本  であることや

    図鑑のキャッチフレーズ、副題として多いのが

     visual

          illustrated

          picture(sque)

         などからも、VIP  というのは 図鑑を体現するキーワードとみなしたい。

 さて、ここで試作する  マリアの図鑑は何よりも 図像学の方法論で構築したく、

その有効性の検証は、

 知りたい、見たい図像が簡単に「検索」できるか、である。

  トレンスの分類などを長々と紹介してきたのはその区分方法を解説するため

であり、以下 実際の図像(ある連載に登場する作例)を抽出しながら

どう検索の「キー」を付すかを試したい。

 その際、三区分を印象づけるため、赤青緑というイメージを用い、

「赤青緑の三区分による」「マリア検索図鑑」を提示していきたい。

 

図像学的ディティール:細部観察の醍醐味

図像学的ディティール、

 トレンスの最後の分類は

 アットリビュート(持物)、

 御子の仕草  (マリアの仕草も間接的に含む)

 その他、からなる。

 アットリビュートの概説は「新カトリック大事典」の

「アットリビュートとその聖人」 「聖人とそのアットリビュート」のように

二つの方向から可能である。

 トレンスでは 動物(鳩など) 植物( ユリなど)

 その他(本、インク壷、星、生命の泉、柱 など)に三大別、

 御子の仕草では

  御子の手がマリアの王冠(頭)に触れる、

  御子の手がマリアの顎に触れる(撫でる)、

  御子の手がマリアの胸に触れる、

  御子がマリアの右腕に載っている、などが示されている。

その他は、衣装:

       髪飾り、髪型、履物 (頭から爪先まで?):

       人工の装い(もとからの着衣に対して、

         後から、たとえば祝日や屋外での行進などのために被せる衣装):

       材質  (図像学というより美術史)

       図像のある位置、配置 (建築内部、屋外のどこに置かれたか)

        (これも図像学というより美術史)

       最後の全体の総括として「マリアの勝利の寓意」像を紹介。

    以上、悲しみ、は三区分していないが、トレンスの分類の大略である。

次回、これらに基づいて「マリア検索図鑑」を試作する。

能動的に祈るマリア像:三区分

守護するマリア像と、とりなすマリア像に二大別、

守護する方が大きなグループなので、

 ミゼリコルディア(守護のマント)のマリア像と

(その変種という扱いの)ロザリオのマリア像に大別、

 その他の図像はどちらか近い方に分類する(検討中)。

とりなすマリア像は下記に三区分されている。

「最後の審判、個々人の審判にて」 「煉獄にて」 「災厄に際して」

 ここでロザリオのマリア像が三つの玄義(喜び、悲しみ、栄光)を

示すから、生涯からの図像はここに分類するのも一法である。

マリアの展覧会

マリアの展覧会:

 「マリアの図像学(2)」(東海大学文学部紀要)では

日本の展覧会(1954~1987年)で展示されたマリア像を抽出、

図像学的分類を試みています。

 これは(1)で提示した図像学的枠組みの検証にあたる作業で、

展覧会の記録というのは二次的な意義だったかもしれません。

とはいえ、海外のように「マリア」だけで一つの展覧会を構成する

ことは殆どない日本では、こうした抽出も無意味ではないと考え、

1987~2007年の20年の空白はありますが、作業を再開したいと

考えます。もちろん情報はネットにも溢れていますし、完全を期す

こともできませんが、図像学的分類の検証に役立てばと思っています。

 3月の主な、マリア像を含む展覧会は下記の通りです。

 :レオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」展

 :クレムリンの秘宝展; 江戸東京博物館

   ロシアのイコンで「哀れみ、慈悲のマリア」、マリアが御子イエスに頬寄せる図像、

 が主要展示の一つです(ぴあ、にて図示)。この図像タイプについては

 立教チャペル・ニュースの連載、「マリア像の分類(5) 情愛のマリア

 その三つの型」および「マリア像の分類(8) ロシアのマリア像」で紹介しています。 

 また、3月はマリアに関してはその「受胎告知」の祝日がメインですので

今月のマリア、といったタイトルも作成していきたいと考えています。

 

マリアの図像学(3):名称、形態の分類

マリアの図像学(3):名称、形態の分類

 東海大学紀要、(3)より紹介、引用します。

世界各地で崇敬されるマリア像、聖母子像につけられた様々な名称は図像の成立事情や崇敬史を伝えるものとなっている。こうした名称を列挙、整理しておくことは図像タイプの理解にも有益である(必ずしも図像タイプとの対応は明確ではない)。もちろん個々の地名を列挙するだけでは体系的な把握はできない(第2部で主要地名は網羅した)。

それよりも、抽象的、形容詞的なマリアの名称を、そこにふくまれる概念で大別し、

人々がマリアにどんなイメージを求め、また付与してきたかを知る手がかりとしたい。

マリアの図像学:王座(玉座)に座すマリア像

「王座(玉座)に座すマリア像」(トレンス)を三区分し、下記のように提示します。

 尊厳の聖母子像(マエスタ):その随伴者として、天使、聖人、使徒、聖処女ら、、、

 三重冠(を被るマリア)

 ソロモンの王座(上智の座)

 聖職者としてのマリア:例外的な図像、

  以上を「狭い意味での」王座に座すマリア像と考えます。

次いで、

 謙譲のマリア:地上に座ったり、尊厳より情愛を示すなど、王座の尊厳とは

  異なる、しかし、王冠を被ったりとその境界は必ずしも明確でない図像、

 と 

 授乳(御子イエスに)のマリア:やはり、尊厳とは異なるが、その境界は必ずしも明確で ない図像、なお(御子イエス以外に)「授乳」するマリアは「能動的にとりなす」図像でも登場する

  で一つのグループ、そして最後に

「開くマリア」(マリアの胎内が開き、御子、三位一体、聖遺物といった内容を

含む、ややグロテスクな感もある図像、

 と「黒いマリア」像という、やはり謎の多い図像グループです。

  マリアの胎内に御子がいる図像は「喜びを黙想する」にある、

「懐妊、希望」のマリア像とも似ています。

2007年3月 4日 (日)

マリアの図像学:喜び(を黙想する)図像像

トレンスの「マリア図像学(系統)樹」では

祈る→黙想→喜びはさらに二大別され、一つは「無原罪の御宿り」のグループ、

もうひとつは以下の図像からなるグループです。このグループの二区分を

試みることで三区分を提示します。

黙示録のマリア、時の初めから先在する

  黙示録のマリア:翼のある、

  シビル(巫女)の予言したマリア: ティブルの巫女の予言と、パトモス島における聖ヨ              

   ハネの幻視に関連、

グアダルーペのマリア:黙示録のマリア、のように「天上の出現」と関連、

  「出現のマリア」(いわゆるマリア出現、を含む)

希望、懐妊(またはO(図像名))のマリア:

 御子イエスを懐妊しているマリアを描く図像、このグループのなかで

 独立したグループとみなせる

 麦穂のマリア:希望、懐妊のマリアの類似とトレンスは捉えている;

  いろいろな解釈ができる重要な図像タイプだがとりあえずここに配置する

 腰布のマリア:トレンスはここに配置しているが、出来事としてはマリアが

 被昇天に際し、疑いを持つ使徒トマスに腰布を与えたという伝説に基づく。

 

 いずれにせよ、懐妊、希望のマリア、を独立させ、

 黙示録(先在)のマリア、懐妊・希望のマリア、無原罪の御宿りのマリア、

 と三大別したい。

マリアの図像学:「祈る」マリア像を三区分

トレンスの分類による、マリア像の区分:第一段階は「祈る(立っていることが多い?)」、「王座(に座す)」、「図像学的ディティール」の三つでした。第二段階は更に三区分を続けます。

 第一段階と色との関連づけは、「信仰、希望、愛(カリタス)」の三区分(対神三神徳ですが、知恵の擬人像であるソフィア(上智)の三人の娘、という位置づけもある、アンブロージオ・ロレンツェッティの絵がある)を紹介する時にあわせてします(因みにこの三つの色は信仰:白、 希望:緑、 愛:赤 です)。「カリタス(愛、慈愛)」の擬人像は二人以上の幼児に授乳する女性像として描かれることが多く、「授乳するマリア」像(幼児に授乳する時は御子イエス一人)との比較も興味深いところです。

 さて「祈る」マリアは「黙想」して祈る、と「能動的に」祈る、の静と動に二分されますが、ここでは三区分を採用していますので、「黙想」の下位区分を昇格させ、「喜びを黙想して祈る」「悲しみを黙想して祈る」「能動的に祈る」を提示します。

次回は「王座に座す」マリア像の三区分を提示します。

2007年3月 3日 (土)

マリアの図像学:分類方法

マリアの図像を図像学的に分類する試みを提示します。

ヒントはスペイン語の文献、トレンスのMaria: Iconographia de la virgen

en el arte espanola にある「図像学的系統樹」です。

スペインの図像に限定されている点や、単独像が主であることなどへの

対処を施し(改悪でないことを願いますが)、わかりやすいように

赤青緑の三区分を必要なだけ繰り返すことで分類する、という方法を

模索しました。

 まず最初の三区分は以下のとおりです。

1.マリアが祈る(この「祈る」は広い意味です)図像、

2.マリアが王座に座す図像

 (この「王座」も広い意味で、王座の尊厳とは相反するような

「謙譲のマリア」や「授乳するマリア」などを含む:これは

広い意味での「祈る」に含まれない図像と解してよいと考えます。

3 図像学的デティール:

 これは1,2以外の図像像ということではなく、マリアや御子イエス、その周囲に

含まれる主要人物以外の様々な要素を抽出し、分類したものです。

 たとえば1、か2、に該当する図像のデティールとして何が含まれるか

といったことです。

 次回はこの1.2.3をさらに三区分した状況を説明します。

マリアの切手:ザール、1954年8月

Photo_3 Photo_4 このブログの顔ともいえる3枚の切手について紹介します。

個々のデザインは有名な美術作品の一部をクローズアップしたもので

あえて説明を要しないほどです。

 切手は1954年にザール(現フランス、ドイツ間のアルザス・ロレーヌ地方)から、

Photo_5 1954年8月に「マリア年」(カトリック教会が「無原罪の御宿り」という、マリアに

関する教義(信ずるべきとした事項)の制定100周年を記念して、この年を

マリア年とした)を記念して発行されました。切手のテーマとしてキリスト教やマリアは

大きなテーマです。

Book デザイン別 切手収集大百科―テーマチク・コレクション100

販売元:日本郵趣協会
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 マリアの切手について詳しいことはここにリンクを設定した、マリアのホームページ

切手のみならず、マリアの全てを紹介しています。

 文献では外国の切手カタログの他、「マドンナ・スタンプス」(1961年、ページ表示無いが32ページ)という、アメリカの宗教切手グループが発行したチェックリスト(内表紙がこの3枚を縦に並べています)や、「ガブリエル・国際百科:切手の上のキリスト教モティーフ」(1990年、1046列{1ページ2列で実際は523ページ)内の「マリア」(620列、他の項目への参照指示のみの親項目)や「マドンナ(聖母子像)」(587列~607列)という項目などが参考になります。

マリアの予型論(その2)

(続き)予型論はタイポロジーとも呼ばれ、「岩波キリスト教辞典」はこの名で

立稿しています。旧約と新約の対応ということは最小一対一の対応でよいことに

なりますが、有名な神学者アウグスティヌスの「世界史は三つの時期に分けられる」

に基づき(図像学では)三つの対応を描くこともあります。

 以下、「歴史読本」シリーズの記事(新人物往来社、詳細は前回の記事参照)からの

引用です。

「三つ(の時代区分)とは、

一、モーセが律法を授与される以前の時代(「創世記」から「出エジプト記」一八章まで)

二、モーセが律法を授与されて以後の旧約聖書の時代

三、イエスの宣教した福音の時代(新約聖書の時代だけでなく、最後の審判までの

 人類の全歴史を含む)、 です。

こうした予型論は当然マリアにおいても盛んで、その全てを述べることは

マリアの図像学全てにほぼ匹敵するほどです。マリアの象徴(シンボル)と

されるものは予型論から導きだされたと考えられます。というのは予型論は

聖書、キリスト教にとどまらず、他の非キリスト教的文献からも「予型(もとの

タイプ)」を探そうとしたからです。こうした行き過ぎを批判するとすれば

(語呂合わせで申し訳ありませんが)「余計な予型論」というわけです。

次回はマリアの象徴(シンボル)や持物(アットリビュート):図像学において

重要な小道具的要素、を紹介します。

マリアの予型論(その2)

(続き)予型論はタイポロジーとも呼ばれ、「岩波キリスト教辞典」はこの名で

立稿しています。旧約と新約の対応ということは最小一対一の対応でよいことに

なりますが、有名な神学者アウグスティヌスの「世界史は三つの時期に分けられる」

に基づき(図像学では)三つの対応を描くこともあります。

 以下、「歴史読本」シリーズの記事(新人物往来社、詳細は前回の記事参照)からの

引用です。

「三つ(の時代区分)とは、

一、モーセが律法を授与される以前の時代(「創世記」から「出エジプト記」一八章まで)

二、モーセが律法を授与されて以後の旧約聖書の時代

三、イエスの宣教した福音の時代(新約聖書の時代だけでなく、最後の審判までの

 人類の全歴史を含む)、 です。

こうした予型論は当然マリアにおいても盛んで、その全てを述べることは

マリアの図像学全てにほぼ匹敵するほどです。マリアの象徴(シンボル)と

されるものは予型論から導きだされたと考えられます。というのは予型論は

聖書、キリスト教にとどまらず、他の非キリスト教的文献からも「予型(もとの

タイプ)」を探そうとしたからです。こうした行き過ぎを批判するとすれば

(語呂合わせで申し訳ありませんが)「余計な予型論」というわけです。

次回はマリアの象徴(シンボル)や持物(アットリビュート):図像学において

重要な小道具的要素、を紹介します。

マリアの予型論

マリアの図像学にかかわる時代区分の二つ目を紹介します。

(一つ目は1~8世紀、9~12世紀、13世紀~現在、で

赤:考古学、緑:過渡期、青:として紹介)

それは「予型論」によるもので

「新約(聖書)のなかで実現するイエスの誕生・処刑・復活・昇天は

すでに旧約(聖書)において予告されていた。旧約と新約をめぐる

「約束」と「成就」の関係は、古くから予型論として考察されてきた」

( 「目でみる予型論」、歴史読本ワールド創刊号「聖書の世界」、254-259ページ、1990年4月、  別冊歴史読本、第20巻3号「聖書の謎百科」、448-456ページ、1995年1月に再録)   (以下 続く)

 

2007年3月 2日 (金)

マリアの考古学

マリアの考古学、といった場合はキリスト教考古学の一部と理解するのが

通常であり、考古学、図像学、美術史の違いはたとえばマイりストに挙げた

「新カトリック大事典」などを参照頂きたい。

 ここでは少し拡大解釈をして最古のマリア像の起源を同時代の

他の宗教その他に求める分野をも「比較文化史」的に

「考古学(起源を探る)」としておきたい。

 女性像としてのマリアはギリシア神話の女神たち、

アフロディティやアテナ、やエジプトの女神とその子、

イシスとホルス像、や旧約聖書の女性たち、

エバやエステルなど、との比較によってその

起源の一端が辿れる。4、5世紀頃までの

母子像、羊飼いの母子を描いた石像、などは

キリスト教の聖母子像と似ており、形態、図像学

的にはモデルと考えられる

( ジェームス・ホール著、邦訳無し、

「イタリア美術におけるIdeas and Images」:

ホールの「西洋美術図像事典」(河出書房新社)は

翻訳されて広く親しまれているが、この通史もすごい本で

翻訳してほしいもののひとつ)

マリアの美術

マリアの美術と考古学、図像学といった関連領域を整理してみたいと思います。

美術という言い方に対しては、私の主観的に

すぎるかもしれませんが「傑作主義」という含みが感じられ、図像学との関係では

「造形芸術」との言い方の方がしっくりします。

 また図像の起源、~8世紀くらいまでの時代はローマのカタコンベ(「キリスト教徒

(だけではないが、マリアとの関連は彼らに限る)の地下墓所)のように

図像学は美術というより考古学の領域と渾然一体となっています。

タイトルと少し異なるかもしれませんが、時代の三区分の最初、

赤の時代を「考古学」の副題とする理由の説明にいたします。

 赤は土の連想で「大地、発掘、考古学」ともイメージできます。

「考古学ライブラリー」という考古学のシリーズ(現67巻まで)が

赤系統のカヴァーなのもこうした連想からかもしれません。

 ついでに申し添えますと時代区分の残るひとつ、

「青」は13世紀~現在、です。緑が中間、過度期の色なので

残る色は青しかないからですが、現在のマリア像を記述する際、

何かのヒントになるかもしれません。

 次回はより広い時代を対象にした時代の三区分、

キリスト教の歴史観である「予型論」による区分を紹介します。

歴史の始まりから終わりまでを対象にしていますので、

マリア図像学において、天地創造の頃(マリアと対比される、

原初の女性たるエバが登場)や最後の審判の時「(マリアのとりなし

により判定が変わってしまうかもしれない、、、、キリストが

唯一の神、というキリスト教の根幹からは少し外れた信心)の図像を

分類する際の時代区分となります。

時代区分:緑(過渡期) 9~12世紀

「マリアの図像学(4)」より引用します。

「テオトコス(注:神の母としてのマリア)を主とする8世紀迄と、マドンナ(注:聖母子像の

別称であるとともに、親愛の側面を強調する用語)を主とする13世紀以降、にはさまれた

時代はマリア像における様々な試み、後の開花の萌芽がみられる。

 通常の聖母子像はキリスト教における救済史(旧約聖書と新約聖書の記述を、

神による人類の救いの総体として理解する歴史観)における受肉

(神の子イエスが人間となる)の表現である。

 それに対して、救済史においてマリアの占める位置を示す図像がある。

マリアと、聖書に登場する人物や神学的な擬人像との対比、同一視により

もたらされた図像もそのひとつである。

それがエバ、黙示録の女、そしてエクレシア(教会の擬人像)、雅歌の花嫁、等である。

これらをマリアと同一視することは東方では見られない現象であることからも、

西欧初期中世を特色づける図像と見なしうる」

 長々と引用しましたが、9~12世紀を中間期間と区分することの根拠の

提示になっていると考えます。

 次回は歴史記述の5W1Hの順で

いつ、に次ぐ どこで、などを示します。そして

マリアの図像学という核心以外の、

美術史などの用語は

「岩波西洋美術用語辞典」(益田朋幸、喜多崎親、

 岩波書店、2005年)の用語分類表に準拠して

分類する予定です。

赤青緑による区分(続き)

3枚の切手がどういう切り口での赤青緑の区分を示すかです。

    作者、 国 、 キリスト教の宗派 、 御子イエスとマリアの姿、

赤:ホルバイン、イギリス(活動した国)、イギリス国教会、御子イエスはマリアの左手側、

青:デューラー、ドイツ、プロテスタント(の発祥地)、御子イエスはマリアの右手側、

緑:ラファエロ、イタリア、カトリック、御子イエスはほぼ正面を向く、

 宗派の分類は別のより広範なもの、たとえばカトリック、プロテスタント、正教会、

という区分も可能です。いずれの場合も「その他」の扱いは一番近い色に収める

のが妥当です。次回は時代区分で中央値を「9~12世紀:テオトコスからマドンナ

への過渡期」とした試みを説明します。(「マリアの図像学(4)」 東海大学文学部紀要

赤青緑による区分について

文献からいったん離れて、赤青緑による区分という方法について提示いたします。

3枚の切手を見ていただくとおわかりのように3原色で何らかのテーマを区分する

ことは正確さを多少犠牲にしてもわりきったわかりやすさがあります。

実際はこの3枚の原作はこの色ではありませんが、こうして提示されたのに見慣れ

ると元からこうなっていたかのように思われ逆に固定概念の怖さも感じます。

さてここでの赤青緑が何かといえば、様々な切り口が考えられます(以下 続く)

     作者    国    宗教           御子イエスの姿

赤:ホルバイン、ドイツ、プロテスタント(の発祥の地)、マリアの左手側

2007年3月 1日 (木)

シラーの「キリスト教美術の図像学」

シラーの「キリスト教美術の図像学」は全5巻7分冊からなる大著で、「マリア」については

第4巻第2分冊「マリア」のみならず全巻に記述があります。これだけの大著ですので

著者の途中の予告通りには完結せず、最後の審判、三位一体、(旧約聖書)は

含まれずじまいでした。

 ささやかながら、全5巻の抄訳(紹介)を試みる際には、もしあったならば

最後の審判、三位一体、(旧約聖書)の巻で「マリア」に関する記述が

どうであったかなどを想像していきたいと思います。

 ここでは一言だけ苦言を、すなわち著者自身も述べているように

単独のマリア像については、東方(ビザンティン帝国など)と西欧に

分け各約10ページ、約40ページを費やしているものの不十分な

扱いにとどまっていることです。

 逆にマリアの生涯、説話的図像については「マリアの図像学」の基本的文献にふさわしいといえましょう。

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マリアについてのサイト

マリアの図像学を知るために

  • 松本 富士男 (協力 小杉 健): 「情愛の聖母子」彫像の図像学的記述 -13~15世紀を中心に  「キリスト教史学会紀要」 116-92p
    図像学的観察の対象としてフランス、ゴシック時代の大聖堂のトリュモー(支柱)に登場した、親愛を強調した聖母子立像をはじめ32点を図示。頭の先から爪先まで、持ち物も観察、分類した。ちなみに図1はアミアン大聖堂の通称「黄金の聖母子」、キーワードは「視線の交流(いわゆるアイ・コンタクト)」、マリアは斜め上からイエスを見つめる。図7では二人の視線は同じ高さで向き合い、図8では二人の視線は向き合わない。
  • 松本 富士男 ( 協力 小杉 健 ): マリア像の変遷 立教大学チャペル・ニュース  1987年から1991年に掲載 31回+α
    「最古のマリア像」 (1987年4月)でローマのカタコンベ(地下墓所)に見られる図像などを紹介。 「マリア像の成立」 (1987年6月)では「神の母」としてのマリアへの崇敬が確立した431年のエフェソ公会議を中心に当時の代表的図像を紹介。 1987年1月からは「マリア像の変遷」として「マリア・オランス(祈るマリア)」を(1)と題し、ほぼ時代順にマリア像の変遷を記述。1990年4月の(24)20世紀前半、続く (25)の「現代のマリア観」で一段落した。ついで(26)からは視点を変え、服飾、図像に表現された喜び、悲しみ、マリア像の胎内に何かを含む図像として、御子イエスを含む「懐妊、希望のマリア」像、それ以外を含む彫像、聖遺物容器としてのマリア像を紹介した。 なお、クリスマス、12月号では関連記事とするため、 (11):1988年12月では1988年に日本で刊行されたマリアに関する本の紹介、降誕図像を中心に、フランスの聖母子像を集大成したヴロベルクの著作を紹介した。  (21):1989年12月ではサンタ・クロースに因み 彼や聖ニコラウスとマリアが同時に描かれた図像を紹介した。
  • 松本 富士男 ( 協力 小杉 健 ): マリアの図像学(3):名称、形態の分類 東海大学文学部紀要 52(1990年) 122-86
    内容を順次 紹介していきます
  • 松本 富士男 ( 協力 小杉 健 ): マリアの図像学(2) 日本の展覧会で展示されたマリア像 東海大学文学部紀要 49 1988年
  • 松本 富士男 ( 協力 小杉 健 ): マリアの図像学(4) 西欧 9~12世紀のマリア像 テオトコスからマドンナへの過渡期 東海大学文学部紀要
  • トレンス、 : マリアの図像学的系統樹 ( 書籍内のはさみこみ部、 スペイン語)  図像学的分類の枠として変更を加え試行中
  • 松本 富士男: イエス像の変遷 (関連テーマとして) 立教チャペル・ニュース 1974年12月~1981年2月 61回連載
    全61回、マリアに関する部分を順次 紹介していきます
  • 松本 富士男 / 小杉 健: マリアの図像学 
    聖公会出版  2008年7月 定価3150円   A5 44,7,226ページ

マリア像の変遷、詳細

  • 最古のマリア像
  • マリア像の成立
  • (1)マリア・オランス(祈るマリア)
  • (2)尊厳のマリア(王座に座るマリア)
  • (3)立っているマリア像
  • (4)左腕に(御子を)抱くマリア像
  • (5)情愛のマリア(その三つの型)
  • (6)守護・とりなしのマリア
  • (7)西欧のマリア像の成立
  • (8)ロシアのマリア像
  • (9)美しのマリア像への発展
  • (10)イタリア・ルネサンス幕開けまで
  • (11)クリスマスにちなんで:1988年に日本で発行されたマリアの本
  • (12)15世紀のマリア像
  • (13)黙示録の女,守護のマント、ロザリオのマリア
  • (14)イタリア・ルネサンス盛期
  • (15)無原罪の御宿りのマリア像
  • (16)15世紀ドイツ圏のマリア像
  • (17)ルターのマリア像
  • 18.バロックのマリア像
  • 19.新たなイメージと啓蒙時代
  • 20. 18世紀(続き)
  • 21.クリスマスにちなんで:サンタクロースとマリア
  • 22. 19世紀前半
  • 23. 19世紀後半
  • 24. 20世紀前半
  • 25. 現在のマリア観 (20世紀後半)
  • 26. マリアのファッション: 女王としてのマリア;ローマ、5~9世紀
  • 27. マリアのファッション:西欧中世
    マント:他者をかくまう服飾、 戦闘服を着たマリア; アルブレヒト祭壇画;中世マリア観の集大成となる連作から、 司祭服を着た(聖職者としての)マリア、 麦穂をちりばめた服を着たマリア、 マントの変遷、からなる
  • 28. マリアのファッション、バロック;聖と俗のはざま
    女羊飼いとしてのマリア、 マリー・アントワネットに言及 巡礼者の服装をしたマリア、移動する(巡礼する)不思議なマリア像、などからなる
  • 29. クリスマスにちなんで;喜びを待つこと、待降節のマリア像
    懐妊したマリアが月満ちて、降誕を迎えんとする間、の マリア像: 「待降節のマリア像」とも呼ばれ、 また妊娠に相当する欧米語は「期待、希望」の意味も あり、こうした図像をあわせ紹介した
  • 30. 悲しみ; 受難とあがないにおけるマリア像
    カルロ・ドルチの「親指のマリア」、 幼児イエスと、十字架刑後の亡骸イエス、 それを抱くマリア像がときに似ている例、 深い意味での共通点などを述べる
  • 31. 西欧マリア彫像の成立
    懐妊しているマリア像を紹介済みだが、マリアの 胎内に描かれたのは御子だけではなかった。 子なる神だけでなく三位一体や生涯連作が 含まれたり、聖遺物容器として内部に聖遺物が 収納された例などを紹介

図像学的区分:第一段階

  • 第一区分一:マリアが祈る(広い意味で)図像
  • 第一区分二:マリアが王座に座す(及びその対立例)図像
  • 第一区分三:図像学的ディティール

図像学区分:第二段階

  • 第一区分一第二区分一:喜びを黙想して祈る図像
  • 第一区分一第二区分二:悲しみを黙想して祈る図像
  • 第一区分一第二区分三:能動的に祈る図像
  • 第一区分二第二区分一:(狭い意味で)マリアが王座に座す図像(マエスタ、上智の座など)
  • 第一区分二第二区分二:謙譲のマリア像(地上に座ったり、尊厳より情愛を示す、しかし王冠を被ったりと「王座のマリア像」との区別は必ずしも明確ではない)
  • 第一区分二第二区分三:開いたり、黒いマリア像(やや異教的、グロテスクな印象もある)、懐妊・希望のマリア像とも似る
  • 第一区分三第二区分一:アトリビュート(動物、植物、その他)
  • 第一区分三第二区分二:御子(やマリア)の仕草
  • 第一区分三第二区分三:衣装;髪飾り、髪型、履物、人工の装い、材質、図像の置かれた場所、コンテクストなど

図像学的区分:第三段階

  • 喜びを黙想、その1:黙示録(先在)のマリア像、時の始めからある
  • 喜びを黙想、その2:懐妊・希望のマリア像、御子イエスを懐妊している時期のマリア像:受胎告知(3月25日)からクリスマス(12月25日)まで
  • 喜びを黙想、その3:無原罪の御宿りのマリア像
  • 悲しみを黙想する、その1:悲しみの予感を示す図像、御子イエスが十字架を持ったり、マリアが受難の予感に沈む図像など
  • 悲しみを黙想する、その2:悲しみの実体験を示す図像、ピエタなどイエスの亡骸を抱くマリア像など、幼児イエスを抱くマリア像と似ることも
  • 悲しみを黙想する、その3:その他、7つの悲しみを示す図像やぶどうの樹(十字架にかかったイエスを含み、単なる持物としては分類しにくい)を持つマリア像など
  • 能動的に祈る、その1:とりなすマリア像(審判にて、煉獄にて、災疫に際して)
  • 能動的に祈る、その2:守護するマリア像のうち、「守護のマント(ミゼリコルディア;慈悲)で人々をかくまうマリア像、と(祈り、または数珠状の持物の意味で)ロザリオのマリア像、の2大グループ

マリアの切手

  • ザール、1954年8月   ホルバイン、ディティール、   ラファエロ、ディティール   デューラー、ディティール
2009年6月
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